電動エアコンの導入で燃費が変わる
――一方のトヨタはどうでしょうか?
中谷: トヨタの場合は売れるクルマに多くの予算を割いてきましたから、市販車の方が先行している技術もあります。例えば、ハイブリッドがそうです。F1でもハイブリッドが使えれば、更なる技術向上が期待できますが、今はレギュレーションでストップがかかっています。トヨタしか持っていない特殊な技術だからです。
速ければ何をしてもいいというわけでもないのが、難しいところですね。鈴鹿サーキットを1分30秒で周回できる現在のF1マシンに、あらゆる先進技術を盛り込めば、1分フラットで走ることもできなくはないでしょう。でも、300km/hを想定して設計したコースを500km/h近い速度で走ることになれば、ドライバーも観客も危険にさらされます。
だからレギュレーションで押さえ込み、そのルールのなかで速度を追求するから、また新しい技術が生まれる。その繰り返しだと思います。

レース&テスト・ドライバー 中谷 明彦 氏
――今後、F1から市販車への応用が期待できそうな技術は何ですか?
中谷: 減速時のエネルギー回収と再利用ですね。ハイブリッドにもEVにも使える技術ですし、トヨタにとっては有利だと思います。でも、欧州メーカーはやるとなったら、すぐにでも実践できる技術力を持っているので、どこまで拡大するかはメーカーの考え方次第でしょう。
少なくとも、今後の市販車は電動エアコンの導入がキーポイントになると思います。エアコンは現状、エンジンから発電して動いていますが、それを減速時のエネルギーでまかなえれば、燃費向上に寄与します。トヨタのハイブリッドも初期は違いましたが、今ではスタンダードになっています。
ブレーキで回収したエネルギーはハイブリッドでなければ走ることに使えないので、一般には、エアコンやカーナビ、カーオーディオといった電装品に使うのが最も効率がいい。そのなかでもエアコンは一番エネルギー負荷が高いので、電動化が重要だと思います。
デビュー戦でポールポジションを獲得し、以後入賞多数。同時に自動車関連のマスコミにも所属し、ジャーナリスト活動を展開。
卒業後は自動車専門誌編集部員となり、1985年にプロフェッショナルレーシングドライバーに転向。
89年から日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員を務めるほか、ジャーナリストとして多くの雑誌媒体に寄稿し、ベストモータリング・ビデオ・マガジン(講談社刊)の専属レギュラーキャスター、編集顧問を歴任。レーシングカーを始め、あらゆる高性能4輪自動車の限界性能の解析、追求を得意分野とし、タイヤやエンジンのメカニズムにも精通。
特に自動車の挙動特性の理論的分析には定評がある。
97年から、こうしたドライビング理論の流布を目的にドライビング理論研究会「中谷塾」を主宰、現在に至る。
レーサーとしては、80年より国内のレースで多くの好成績を収めた後、88年に全日本F3チャンピオンを獲得。
89年にル・マン初参戦、マカオGP・F3で4位、91年に全日本F3000優勝、以降国内S耐レースで50勝を記すなど華々しい結果を残している。
▼中谷明彦オフィシャルホームページ
http://www.mirage.co.jp/nakaya/
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