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源流の知恵を書き留め
次世代の子供たちに伝えていく

――多摩川源流研究所で、親子向けの「源流体験教室」をやっているのは、中村さんご自身の経験があるからなんですね。

中村:  子供というのは何も教えなくても、源流の川に連れていくだけで、心が動くのが分かります。一緒に来たある学校の先生は、こんなふうに話してくれました。

「学校で調布市(東京都)の多摩川に連れて行ったときも、子供たちはすごくいい笑顔をするんです。けれど、こんな感動はないし、こんな笑顔もありません。源流は、入るだけで子供たちの瞳が生き生きします」と。


――源流の何が、子供たちを変えるんでしょうか。

中村:  1番は、自然そのものが持つ魅力でしょうね。

源流には清冽な、全く濁りのない、透明感あふれる川が流れています。清冽な川が滾々(こんこん)と流れていて、飲んでみると、それがまた美味しい。「すごい」「きれい」「冷たい」……そういう、自分で見て、触れれば分かる自然そのものの魅力。自然そのものが持つ底知れぬ魅力が、まず子供の心に入ってくるわけです。

また、源流体験では、ヒヤヒヤ、ドキドキすることがたくさんあります。崖をつたって上に登る、とかね。そうすると、元々、子供たちが持っている好奇心や冒険心がくすぐられるんですね。何者にも止められない爆発的なエネルギー、マグマのような温かい心。本来、子供たちが持っている力が、自然の魅力に刺激されて、引き出されていくんです。

体験コースには、大人だってオタオタするような、つるつるする岩や石がいっぱいあるんですよ。先生も親も、自分のことで手一杯になってしまう。むしろ子供のほうが適応力が高くて、どんどん上へ、上へと登っていったりします。1回、自分の足で沢を横切れば、「できた!」と大喜びして。そういうときの子供たちの表情は、本当に魅力的です。

源流体験教室の様子(写真提供:多摩川源流研究所)

源流体験教室の様子(写真提供:多摩川源流研究所)
(クリックすると拡大した画像が開きます)


――今の子供たちにはあまりない体験ですから、より新鮮でしょうね。

中村:  それから体験教室では、森を歩きながら色々な話をします。

例えばブナの森では毎年、葉が落ち、木の実が落ち、枝が落ち、1ha当たり3t積もります。それが100年続いて、やっと1cmの腐葉土が出来る。3mを超えるような大きなブナは、それが60cm、つまり6000年分の腐葉土がないと、300年、400年と生きることができません。ブナは、そういう腐葉土の豊かなところにしか育たないんですね。

逆にいえば、ブナは水源涵養能力が高い木です。ブナ自身もどんどん腐葉土を作るので、周囲の土は踏むとふわふわで、スポンジ状になっています。実際にそういう場所に連れていくと、子供たちは「うわー、ふわふわだ」「スポンジみたいだ」といって走り回るんです。

そこで、源流の役割や意味を話していくんです。

「君たちの住んでいるコンクリートでゴツゴツしたところでは、雨が降っても水は全部、流れちゃうだろう? それでは日照りになったときに困るよね。だから源流ではこの土が大事なんだ。この土が、雨が降ったときに水を全部、蓄えておいてくれるんだよ。それで、少しずつ『ちょびり、ちょびり』と出してくれるんだ」

「そうやって、源流の森が水を蓄えていてくれるから、日照りのときでも川は枯れないんだよ。森と、川と、海は、つながっているんだよね」……そんな話をしていくと初めて、「つながり」ということが少し分かってもらえるんですね。

多摩川源流研究所 所長 中村 文明 氏

多摩川源流研究所 所長 中村 文明 氏

特に小学校3~4年生くらいになると、「川は、こういう森の中から生まれるんだ。そうして海まで届くんだ」ということをきちんと理解できるようになります。だから小学校のころに源流を体験してもらうのは、とても大切なことだと思っています。

そして私が源流のお年寄りに教えてもらったこと、源流で育まれてきた知恵を、次の世代に伝えていく――それが私の仕事だと思っています。


――ありがとうございました。

(前編はこちらから)


▼関連サイト
多摩川源流研究所
山梨県小菅村
東京農業大学 源流大学
東京農業大学


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中村 文明(なかむら・ぶんめい)氏
多摩川源流研究所 所長

略歴

1948年10月30日生まれ。宮崎県東諸県郡高岡町出身。中央大学法学部卒業。
1983年~2001年 中村英数塾経営
1987年~2000年 塩山市教育委員会・大藤公民館主事
            大藤公民館館長(塩山市館長主事会副会長・主事会会長)
1994年12月7日 多摩川源流観察会結成、会長
2001年4月8日 多摩川源流研究所設立、所長
2002年5月25日 全国源流ネットワーク設立、代表


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