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「先進国」が起こした環境破壊の
しわ寄せが北極圏に表れている

――ただ、そのように北極圏で暮らしている人々の生活に、そこで住んでいる人ではなくて、日本を含めて、遠く離れた国が引き起こしたCO2の過剰排出といった環境破壊が影響していることになりますよね。その点、とても理不尽な印象を受けるのですが。

石川:  先進国の人たちがエコだなんだと盛り上がっていても、実はその人たちが原因で引き起こされたひずみがその人たち自身に降りかかるのではなく、最初に北極とか、太平洋の小さな島だとか、贅沢な暮らしとは無縁のいわゆる「辺境」の地にとばっちりがいくわけです。

“エコロジー”という響きは、なんとなく時代にあっていて、カッコいいという印象があるのかもしれませんが、結局は単なる商業活動やファッションになりがちではありませんか? 実感もないのに、単にアピールするだけの風潮には、僕は賛同しかねます。


――確かにそうかもしれませんが、しかし先進国の人間がエコな活動や取り組みをしない限り、北極圏をはじめとする他の地域への影響を食い止められないじゃないですか? その点、どうすれば良いと思いますか?

石川:  まずは想像力を持ち続けることだと思います。今この瞬間に、様々な人たちが色んな暮らしを営んでいるということに少しでも思いをはせることが重要ですよね。いつでもどこでも「自然を大切に」とか「エコロジー」とか言ってしまう前に、まずはそのような想像力を持ち続ければ、少しずつ変化が起こると思っています。

そのためにも、実際に色々なフィールドに出てみることも重要ではないでしょうか。ただ「山や川にゴミを捨てるな」と言うよりは、実際に山や川を見て、「いいな」とか「キレイだな」とか思ったら、ゴミなんて捨てません。

何も北極圏まで行かなくても、近所の山や川や海など、身近な自然のなかへ少しでも自分の体を投げ出してみることも大切だと思います。


――この写真集『POLAR』も、そのような想像力を持ち続けるうえでの“肥やし”のようなものになるのかもしれませんね。実際、北極圏の人々の暮らしって、都市に暮らしているとなかなか想像し難いもので、このようにリアルな人々の暮らしの様子を目の当たりにすると、ある種のショックを受けます。

石川:  北極というと、“辺境の地”という印象はありますが、実際は自分たちと同じような暮らしがある。なんとなく日本の人とも顔が似ていてお互いにシンパシーを感じたりします。「どこの村から来たの?」なんて、普通に聞かれたりもしますしね。

“辺境”は、実は自分たちの心の中にしか存在していなくて、本当は人の数だけ無数の“中心”がある。そうやって世界を見ていくと、見慣れた世界地図がどんどん変化していくと思いますよ。


――ありがとうございました。

写真家 石川 直樹氏

写真家 石川 直樹氏

石川 直樹(いしかわ・なおき)氏

経歴

写真家。1977年東京生まれ。
2000年、Pole to Poleプロジェクトに参加して北極から南極を人力踏破、2001年、7大陸最高峰登頂を最年少(当時)で達成。人類学、民俗学などの領域に関心をもち、行為の経験としての移動、旅などをテーマに作品を発表し続けている。現在は東京芸術大学大学院に在学中。多摩美術大学芸術人類学研究所研究員。


主な写真集

『POLE TO POLE 極圏を繋ぐ風』(中央公論新社)、『THE VOID』(ニーハイメディアジャパン)、『NEW DIMENSION』(赤々舎)、『POLAR』(リトルモア)

主な著書

「この地球を受け継ぐ者へ」(講談社+α文庫)、「大地という名の食卓」(数研出版)、「全ての装備を知恵に置き換えること」(晶文社)、「いま生きているという冒険」(理論社)

主な受賞歴

2006年「さがみはら写真新人奨励賞」
2006年「ニコンサロン三木淳賞」

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