インドネシアでの驚愕体験
人糞が流れる川の子供たちは病気知らず
――寄生虫といえば悪者ととらえる風潮の中、藤田教授は以前から「寄生虫や微生物がいない清潔過ぎる社会は、逆に不健康である」と主張され続けています。まずどのような経緯で、人間と寄生虫の関係について研究を始められたのでしょうか?
藤田 紘一郎 教授(以下、敬称略): 私の研究は、正式には「寄生虫学」「感染免疫学」「熱帯病学」で、バイキンやウイルス、そして寄生虫などで起こる感染症の専門家に位置づけられています。そもそも私が寄生虫に興味を持ったのは、40年前に訪れたインドネシアのカリマンタン島での経験がきっかけです。
その村は炊事、洗濯、水浴び、トイレといた具合に生活のすべてを同じ川で行っており、子供たちが遊んでいる隣に人糞が流れているという状態なんですね。見た目には、それはそれは汚い(笑)。
最初は驚いて「病気になるよ!」と注意していたのですが、そこに通い続けている内に、村の子供たちが日本の子供よりもはるかに健康であることに気付きました。特に、彼らには喘息(ぜんそく)やアレルギーなどの症状がほとんど見られません。
そして分かったことが、多くの子供たちが寄生虫に感染していたのです。

インドネシア カリマンタン島。川で遊ぶ子供たち
これに対して、日本人の寄生虫感染率は戦後、急激に下がりました。1950年には感染率62%でしたが、1965年には感染率で2%を切っています。
――寄生虫感染とアレルギー疾患の因果関係は統計上証明されているのでしょうか?
藤田: はい。例えば花粉症が日本で初めて認められたのは、1963年です。そしてアトピー性皮膚炎や気管支ぜんそくと共に、1960年代後半から現在に至るまで増加を続けています。

寄生虫とアレルギー性疾患

医学博士 藤田紘一郎氏
私は三重県の田舎育ちですから、子供のころには多くの仲間がお腹に寄生虫を持っていて、虫くだしを飲んでいたものです。そして当時の子供たちは、杉の木の側で遊んで大量にスギ花粉を浴びても、花粉症とは全く無縁でした。
そこで「寄生虫が人間のアレルギーを抑える役目を果たしているのではないか?」と考え、研究を始めたのです。しかし、この考えに賛同して一緒に行動してくれる人は誰もいませんでした。
結局、1977年に寄生虫のアレルギー抑制効果を発見するのですが、その時も日本の学会からは無視されました。そこで『笑うカイチュウ』(講談社)などの本を出すことで、一般の方々に人間と寄生虫の素晴らしい共生関係をアピールし続けてきたのです。
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