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北極の氷が溶けると
温暖化はますます加速する

――このまま温暖化が進むとどうなるでしょう?

安田:  私が描いているシナリオは次のようです。

平均気温が3度上がると、北極の氷が全部溶けます。すると、大量の冷たい淡水が海に流れ込むことで、北大西洋の海水の循環が止まります。先ほど説明した「ヤンガー・ドリアス」小氷期が生じた理屈と同じです。それで氷河時代に逆戻りしてくれれば人類は生き延びることができます。

しかし、北極の氷がなくなり北大西洋で海水が摂氏4度にまで冷やされなくなると、酸素を含んだ水が深層に移動しなくなってしまう。水は摂氏4度のときが一番重くなります。そこで4度に冷やされた表層の水が酸素をいっぱいに含んで海底に沈みこみ、深層水の循環を維持しているのです。

ところが4度に冷やされないと酸素を含んだ表層の水は深海にもぐりこめません。すると海中の酸素濃度が不足して様々な生物の死滅につながります。生物の死骸が海底に蓄積することで次第にメタン(CH4)が発生し、ますます温暖化が進むことになります(編集部注:メタンは二酸化炭素に比べて、同じ放出量で約23倍の温室効果をもたらす:IPCCによる2001年の報告書より)。

これは何も荒唐無稽な想像ではありません。実際に1万5000年前から9000年前にかけて、地中海で起きたことなのです。ナイル川の源流のビクトリア湖の水位が急上昇してナイル川にあふれ、膨大な淡水が地中海に流れ込んだ結果、地中海の海水における酸素濃度が低くなり、生物は大量死しました。その証拠が、現在も海底に残っているサプロペル層です。

同じことが地球規模で起こるのです。

よろしいですか。今よりも5度も6度も平均気温が高い気候といえば、かつての白亜紀やジュラ紀、もっと分かりやすく言い換えれば「南極海で泳げた時代」の気温なのです。海はドブのようになって、大気はメタン(CH4)、二酸化炭素(CO2)、硫化水素(H2S)などが今よりも多い。そうした環境下では、人類は生きていけないような気がします。

百歩譲って、それでもエネルギーや技術などを駆使して人類がなんとか生き延びたとしましょう。しかし、生き延びるためのエネルギー資源として原油などの化石燃料を使い果たした後、その排出した大気は数百年は大気に残存し、灼熱地獄の世界が続きます。そしてその灼熱地獄が終わったあとに来るのは、「寒の戻り」とも言うべき氷期の到来でしょう。人類ははげしい気候変動の嵐に翻弄されるでしょう。

またこの過程で、世界中のあちこちで大洪水が発生します。温暖化による海面の上昇と気候の湿潤化は、降水量の増加の原因となります。分かりやすく言い換えるなら、皆さんの記憶にも新しい、2005年にアメリカを襲ったカトリーナの何倍ものハリケーン(暴風雨)が多発するでしょう。

逆に、温暖化により気候の乾燥も進み、干魃(かんばつ)も起きて砂漠化が急速に進む地域も出てきます。そうなると作物もどんどん育たなくなります。

2025年に平均気温が2.0度上昇したと仮定したときの世界の気候。大陸の東縁では豪雨とハリケーンが発生し、内陸部から西側にかけては干魃が激しい。

2025年に平均気温が2.0度上昇したと仮定したときの世界の気候。大陸の東縁では豪雨とハリケーンが発生し、内陸部から西側にかけては干魃が激しい。
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