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文明が誕生・発展するのは寒冷期
人間は寒い気候に適応している

――気候変動によって、過去の歴史が変わった実例はあるのでしょうか。

安田:  人類の文明が誕生するのは、常に寒冷期なんですよ。

例えば、1万5000年前に起きた温暖期から寒冷期への移行によって、人類は絶滅の危機を迎えました。それを乗り切るために発明されたのが、農耕です。

5700年前の都市文明が生まれたのは、「ヒプシサーマル」後の寒冷期ですし、一神教が生まれたのは3200年前の寒冷期、そして現在の人類の文明を支えている科学革命は17世紀の小氷期に起きています。

国際日本文化研究センター教授 安田喜憲氏

国際日本文化研究センター教授
安田喜憲氏

――なぜ寒冷化で文明が発達するのですか?

安田:  一言でいえば、寒冷化はゆっくり進行するから、人類は対応できるんですね。

例えば、現在に至る直前の氷期、具体的には一番気温が低かったのは約2万年前ですが、当時の気温は今よりも7度も低かったのです。その氷期において、最初に冷え始めたのは11万5000年前ですから、8万年以上かけてゆっくり冷えてきたことになる。これが大きなポイントなのです。

地球の気候は、氷期約8万年と間氷期(温暖期)約2万年を10万年単位で繰り返しています。人類が誕生してから現在に至るまでの約20万年のうち、17万年は氷期でした。つまり人類は、寒い気候に適応しているのです。

中世の温暖期は今よりも1.5度ほど、縄文時代の温暖期は2度ほど平均気温が高かった。このくらいの温度上昇には、人類はなんとか対応してきた。

ところが今問題になっている地球温暖化では、「今後、50年間で約6度上がる」と予測されている。これだけ急激な温度上昇の変化では、人どころか自然も、さらには地球さえも適応できないのではないか?と私は思っています。

『The Day After Tomorrow』という映画をご存知でしょうか。あれはフィクションですが、実際に1万5000年前、それまでの最終氷期から温暖期に移行していくなかで、アメリカ大陸にあった巨大なローレンタイド氷床が溶けてその前にできた巨大な氷河湖の水が1万2800年前に氷の堤防が溶けたことで崩壊一気に北大西洋に膨大に流れ込んでしまった。

淡水は海水より比重が軽いですから、北大西洋の表層に留まります。その結果、大西洋における海洋深層水の循環が止まってしまい、元々はメキシコ湾で温められ北上していた海水が北上しなくなった。ヨーロッパは再度、寒冷化し、それが引き金になって地球全体が冷えてしまった。

これが「ヤンガー・ドリアス」と呼ばれる小氷期です。その間、北極の平均気温は9度から10度も低くなりました。それでも人類は生き延びたのです。繰り返しますが、寒冷化に対してはなんとか人類は対応できるんですよ。

しかし、逆に現在より5度も、6度も平均気温が上がると大変に危険です。これは恐竜がいたころ気候で、二酸化炭素(CO2)濃度は現在の約4倍ありました。

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