農村が山を放置すると
都市の暮らしも脅かされる
──環境を守るための施策も、その施策そのものが環境にやさしいかどうかが重要になるということですね。
宮林: 「環境資本主義」という言葉が最近、使われていますが、これはつまり「資本を投入する前には、環境をまず考えるべきである」という考え方です。これからの産業政策は、全てそうあるべきだと思いますし、環境保護のための施策であればなおさらです。
間伐対策は、日本の環境問題を考える上で、大きな課題であると認識しています。林野庁、経団連、ボーイスカウト、140社の企業で構成された「美しい森推進協議会」では、2008年度の概算予算要求で間伐対策費に700億円を要求しており、私自身も、事務局長として、この活動を推進しています。
こうした環境議論は森林には追い風。でも話がまた戻ってしまいますが、経済性が成り立つところまでは、まだいかないんです。現在、1haの森林に2500本の木を植えて、10年間で儲かるのが200万円ぐらい。間伐まできっちりやると、最終的に600本の木が1200万円ぐらいにならないと利益になりません。
一時期、1本2800円まで下がった木材の値段も、今は8000円ぐらいまで戻って少しましになりましたが、まだまだ農家が持ち出ししている状況には変わりない。だから山が放置されてしまいます。これを改善するためには環境税、森林税といった税制も検討すべきなのかもしれません。
農家が山を放置することで、都市の暮らしも脅かされます。先日の台風9号では、「なぜ、こんなところが?」と思うような場所で土砂崩れや河川の決壊がたくさん発生しました。村の人が出入りし、手入れしている山なら生活のために片付ける小さな崩れも、それがなければ放置されます。その結果、地形が変わり川がせき止められ、ある日土石流となって下流を襲うのです。
今、日本中にそういう場所が25万カ所もあるといわれています。およそ10haに1カ所はある計算です。農家の人々が山を見ていたときは、そういう危機管理も彼らがきちんとやっていた。おかげで、下流の我々は安全に生活ができたのです。山の知恵を生かした環境保全のために、林野庁には「老人が地元の道の草を刈ったらお金を出してくれ」と言っています。それで経済活動に参加できるのですから、皆やる気になる。
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