源流大学で生きていくための知恵を身に付ける
──源流大学で身に付く「源流の知恵」とはどのようなものでしょうか。
宮林: 都市社会は便利な社会です。都市社会の人々は、知識はあるけれどもそれが生きていくための知恵になっていない。農山村の人々の知識は、生きていくための知恵になっています。これからの学生は、それを学んで社会に出た方がいいし、下流域に暮す人たちにも学んで欲しい。源流大学の役割はそこにあります。
8月に、世田谷区の学校の先生120名を集めて、環境教育セミナーをやりました。樹木ウォッチングをしても皆さん、木の名前は知っているのですが、知っているのはそれだけなんですね。
常緑広葉樹と落葉広葉樹の根の形が違うのはなぜか。常緑広葉樹は雨水を葉を伝って外側に落とすので、根を外側に向けて張る。落葉広葉樹は幹を伝って落とすので、根は下に落とす。
こぶしの実はそのまま落ちても芽吹かないんだけど、鳥が食べて砂嚢(さのう、鳥類の胃)を通過すると芽が出るようになる。こうすることで、1カ所に密集せず、遠くに広がろうとする。上流の人々には当たり前のことですが、先生方がこれを知ると、子供に話すことが変わるはずです。
──「なぜ、そうなのか」を知ることで、頭の中にある知識が応用できる知恵に変わる一例ですね。
宮林: そうですね。他の例としては、先日、学生の実習で、わさび田の石積みをやりました。わさび田には機械は入れないので、手で一つひとつ積んでいくしかない。とても大変ですが、これは土木技術の原点です。わさび田の石積みができれば、地震が来たときに土嚢(どのう)を自分の手で積める。あるいは橋梁設計をする人の頭に石積みがあれば、壊れた時に直しやすい橋を設計できるはずです。
土木や樹木や森のことだけじゃない、質のいい炭やおいしい味噌の作り方を学ぶのもいい。それが源流大学の目指すもの。知識を知恵に昇華して、上流域と下流域の人々が新しい文化を創造するのが源流大学の役割です。

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