生産者と消費者が連携して
本物を実現する「流域社会」
宮林: 今、日本では大工さんが減って、ハウスメーカーが売る家が主流になっています。沖縄で調査をしてみたら、木造住宅を建てられる大工さんは5人しかいなかった。大工さんは山できちんと木を見て、切り出す前にどの木をどの柱に使うのかを考えて、材を注文します。施主と、大工と、農家がつながっていました。今はそういう仕組みがなくなってしまっています。
食べ物にも同じことがいえると思います。今、食の危機が叫ばれていますが、市場原理の中におかれた商品の特徴として、産地と消費がつながらないことが挙げられます。市場を間に挟むので、消費する側からは生産者の顔が見えないし、生産者からも消費者が何を求めているのかが分からない。

東京農業大学 地域環境科学部 森林総合科学科
宮林茂幸 教授
21世紀のキーワードとして“安全性の持続”、すなわち、「セキュリティ」と「サスティナビリティ」が重要になってきます。それを実現するためには、生産者と消費者が連携しなくてはいけない。これはまさに参加型社会であり、“上流と下流の連携”です。
企業と消費者の関係にも同じことがいえますよね。企業の役割は、安全性と継続性に対して責任を持ち、“本物”を提供することのはずなのに、買い替えと利便性を求めるあまりに肝心の視点が抜けているのが今の状態。「本物+安全」が、これからの企業のあり方になるはずです。
上流では本物を作り、下流では本物を買い、森林を上流と下流で共有する、これが流域社会の概念です。下流にいる企業の人たちにも、上流にある本物に触れてもらうことで変わってもらう。
そのための場を提供するのが、私たちが今、取り組んでいる「源流大学」なんです。
宮林 茂幸(みやばやし・しげゆき)氏
東京農業大学 地域環境科学部 森林総合科学科教授
1975年東京農業大学農学部林学科卒業、2000年より現職。21世紀の持続型社会を目指し、特に源流域の森林を、上流の農山村と下流の都市をあわせた「流域社会」の共有財産と位置づけ、持続的な森林保全および利用のあり方と、農山村と都市の交流をテーマとし、済学、社会学、教育学、フィールドワークなどさまざまな手法を用いての研究を行う。
その実践の場として、2006年9月、「多摩川源流大学」を設立。山梨県小菅村白沢分校跡を拠点に、地元住民と協力して実践的な教育活動を展開している。
現在、多摩川源流研究所運営委員長を勤める。
主な著書
『森林レクリエーションとむらおこし・やまづくり』 『森林教育のすすめ方-21世紀の森林・林業を目指した人づくり・地域づくり-』(共著)、『社会林の立地配置と維持管理システム化に関する研究 (文部省科学研究費補助金成果報告書)』(共著)『多摩川上流における環境浄化のための水源林管理システムの策定に関する調査研究』など。
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