経済性が伴わなくては
農家は動かない・動けない
──針葉樹林の手入れというのは、そんなに大変なものなんでしょうか。
宮林: まず、「苗床3年」といって、山に植林する前に苗を育てるのに3年かかります。植林してからも、10年間は6月と8月の年2回、「下草刈り」をします。木の成長よりも周りの草の成長が早いので、下草刈りをちゃんとしないと、日が当たらなくて木が枯れてしまいます。
10年目からは、毎年の枝打ちです。3寸(9cm)角の無節(むぶし・節のない)の材を取るためには、ビール瓶の太さになるまでに枝打ちしなくてはいけません。枝打ちを怠ると、節ができてしまい、木材としての価値が下がってしまいます。
15年過ぎからは、10年おきをめどに間伐を行います。15年、25年、35年ぐらいをめどに間伐を行い、最終的には1ha当たり2500~4000本植えたものを、50年の間に300~600本程度にまで減らし、材として利用します。つまり、1950年代に植えられた木は、今まさに利用される時期にきているはずだったのです。
――そんなにたくさん間伐するんですね。素人からすると、最初から少なく植えておけばいいのにと思ってしまいます。
宮林: 真っすぐな材を育てるためです。木というのは最初は上に伸びますが、15年ぐらいから横に育ち始めます。なので、最初は密に植えることで真っすぐ上に伸び、成長してきたら枝打ちして間伐で間引くことで、真っすぐで太い、いい材が取れるのです。

東京農業大学 地域環境科学部 森林総合科学科
宮林茂幸 教授
本来であれば、15年で間伐された木も、化粧丸太やくい丸太として収益源になるはずでしたが、丁度その時期に安い外材に押されて間伐が金銭的に見合わなくなってしまった。今、山林の多くは、1970年代から1980年代にかけて保育間伐が行き届かず、もやしのような細い木ばかりになってしまっています。台風など、何かあると、ドミノ倒しのように木が倒れてしまうのはそのためですす。
また、木が密集して中まで光が入らないので、木の下に下草が育たない。針葉樹ですから葉も落ちない。葉を分解する微生物も育たない。生命の多様性がないから、木の下に土壌が育たないんです。すると、大雨などで水がそのまま流れてしまう。表土も一緒に流れてしまい、土石流などの災害の原因になる。

手入れされていない森林は木が密集し、枝が伸び放題で光が入らない

源流大学の実習で枝打ちや間伐を行った森林(写真手前)。光が差し込み明るくなった
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