確かな未来を育むために
一番必要なこと
――さて、今、柳生さんが30年以上に渡る様々な活動を通して、次の世代に伝えていきたいこととはどんなことでしょうか?
柳生: 僕は「確かな未来は、懐かしい風景の中にある」ということを、ずっと言い続けているんだ。確かな未来――例えば僕には子供が2人いて、孫が7人いる。そして今、一番上の孫が恋を始めた。やがていくつか恋を重ねて結婚して、子供が生まれる。そしてその子供もある年になったら結婚をし、子供を生む…そういうことを“確かな未来”と言うんだ。つまり、孫やひ孫、彼らがちゃんとした生殖能力を持ち、何の疑いもなく子孫を残すということ。
そしてそうやって生き物として正常な状態を続けていける環境とは、“懐かしい風景”だと思うんだ。つまり、生き物がいっぱいいて、いい風が吹いて、時々嵐もあって…そういう風景。ほら、例えば田んぼの上を風が吹き抜けていく様子を見た時、あるいは雑木林を歩いた時、そんな時って、何か“懐かしい”気持ちにならないか? たとえそれが幼い頃に見た風景でなかったとしてもね。一方、超高層ビルが立ち並び、人工空調が行き届いて、電子的な情報が行き交う…それは懐かしい風景だろうか? 少なくとも僕はそう思わない。そしてそこに「確かな未来」があるとは思えない。その“懐かしい風景”を守って、“確かな未来”を見届けるためには、やっぱり僕ら1人1人が環境というある種とんでもないテーマに関わっていかなければいけないと思う。そのためにはまず生き物のことをよく知ること。そして環境に良くないことは「それ止めようよ」と勇気を持って言うことだな。
――お孫さんがいると、よりリアルに実感できることなのでしょうね。
柳生: ちなみにね、孫との会話、あるいは家族のって、自然や生き物の話が一番なんじゃないかって気がするんだ、僕は。つまり天候の話とか、花の話とか、鳥の話とか。だって趣味の話なんかしたってしょうがないだろ? 自分と孫と同じ趣味だなんてあり得ないんだから。
例えば「台風が来て何々川が氾濫した」とか、「雪が降った」、「白鳥が飛んできた」とか、そういう話って世代間の隔たりなんて何もないよね。実に自然に感情移入できる。そういう会話を積極的にしていくことも、“確かな未来”のために、大切なことなんじゃないかな。

俳優 柳生 博 氏
柳生 博(やぎゅう・ひろし)
俳優。
1937年、茨城県土浦市生まれ。
東京商船大学に入学し船長を目指すが、視力の低下によりその夢を断念。大学を中退し俳優養成所に入所。1961年、東映映画『あれが港の灯だ』(今井正監督)でデビュー。NHK朝の連続テレビ小説『いちばん星』の野口雨情役で脚光を浴びる。その後も『100万円クイズハンター』(テレビ朝日)の司会や、『生き物地球紀行』(NHK)のナレーション、数々のCM出演などで、お茶の間の人気を博す。現在も俳優業、司会、講演、執筆等で幅広く活動中。
またインタビュー本文にもある通り、1989年にギャラリー・レストラン「八ケ岳倶楽部」を、1970年代末より居を構える山梨県北杜市大泉町に開設。氏が作庭した雑木林を見るために、時期を問わず多くの観光客が訪れている。
「財団法人 日本野鳥の会」会長(2007年10月現在)。
主な著書
『花鳥風月の里山 柳生博の庭園作法』(講談社MOOK)、『柳生 博 鳥と語る』(ぺんぎん書房)、『森と暮らす、森で学ぶ―八ケ岳倶楽部』(講談社)、『森のやすらぎ―ぼくの心身リフレッシュ法』(光文社新書)、『素朴がいい。―柳生流・生き方・育て方』(サンマーク出版)
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