都会に住みながら
環境保護に関わる方法
――なるほど。でも都会に住んでいると、そういった活動にはなかなか参加できません。その場合はどうすればよいと思いますか?
柳生: だったら現地でそういう活動をしている人を応援してあげることだよ。具体的な例でいえば、そのお米を買ってあげるとかね。そのためには、そういう環境に良い活動をしている人の存在を知ることだよ。
時々はね、自分以外の生き物のこと、あるいはそういう生き物たちを守ろうとしている人たちのことを考えてみる。そして自分がそれをできないなら、そういうことをしている人たちを褒めてあげることが大事なんだ。
僕が「コウノトリファンクラブ」の会長をやっているのも、「僕、コウノトリちゃん大好き!」ってそんな単純な理由じゃない(笑)。つまり、そういう活動をしている人たちの応援団長になりたいってことなんだ。
――「日本野鳥の会」での活動も、同じ意図があるわけですね。
柳生: これは野鳥の保護を通じて野生動物や自然環境を守るという、会員が5万人もいる非常に大きなNGO団体なんだ。
ここでは会員に向けて、『野鳥』という雑誌を出している。その雑誌では、全国89支部の人たちがどんな活動をしているのかを詳しく紹介しているんだ。そうすると、離れた地域同士ではげましあったり、応援しあったりして、ネットワークが繋がっていくんだよね。そして誰もそのことで「儲けよう」なんて考えていないんだ。
今僕がやっている「八ヶ岳倶楽部」だって、儲けようと思ってやっているわけではない。僕がなぜこの森を買ったかというと、さっきも述べたように、あまりにも荒んで、生き物がいなかったから。それを再生したかった。僕は役者だから、コマーシャルなんかをやれば普通のサラリーマンよりちょっと余計にお金がもらえる。それを森造りに費やして、家族の力を借りながら1人で森造りをしてきたんだ。
ただ自分たちだけでやっていると、「個人の喜び」で終わるんだよね。森を造り始めて10年ぐらいたって、そのことが少し貧相に思えてきて、そこで1箇所を開放した。そして同時に、うちのカミさんが応援しているアーティストたち――才能はあっても、発表の場に恵まれない人たち――のために、作品を発表し、販売するギャラリーとしての場も提供してあげた。
そしたらどんどん人が訪れだして、そのうち「せっかく来たんだから、お茶ぐらい飲ませろよ」なんて言うようになった。それで「じゃあ」、ということでレストランも作った。それが「八ヶ岳倶楽部」なんだ。もちろん、レストランに行かなくても、ただ雑木林を見るだけでいい。非常にパブリックなスペースなんだよ。

山梨県北杜市大泉町に建つ、ギャラリー・レストラン「八ケ岳倶楽部」
今や年間10万人ぐらいの人が訪れるから、色んな業者が「自分も同じような事業をやって儲けよう」と見学に訪れるけど、みんな「これはお金がかかり過ぎる」といって諦めて帰る。
結局、森の手入れなんかを考えると、割りが合わないんだよね。でも僕としては、ただみんなが森や雑木林を見て喜んでほしい、そして生き物たちに負担をかけない場所を造りたい、という目的からで、儲けは関係ない。確かにこの土地を“財産”として所有しているわけだし、お店を運営している。でもここからお金をもらったことって、あまりないんだよね(笑)。
▼参考Webサイト
財団法人 日本野鳥の会

俳優 柳生 博 氏
柳生 博(やぎゅう・ひろし)
俳優。
1937年、茨城県土浦市生まれ。
東京商船大学に入学し船長を目指すが、視力の低下によりその夢を断念。大学を中退し俳優養成所に入所。1961年、東映映画『あれが港の灯だ』(今井正監督)でデビュー。NHK朝の連続テレビ小説『いちばん星』の野口雨情役で脚光を浴びる。その後も『100万円クイズハンター』(テレビ朝日)の司会や、『生き物地球紀行』(NHK)のナレーション、数々のCM出演などで、お茶の間の人気を博す。現在も俳優業、司会、講演、執筆等で幅広く活動中。
またインタビュー本文にもある通り、1989年にギャラリー・レストラン「八ケ岳倶楽部」を、1970年代末より居を構える山梨県北杜市大泉町に開設。氏が作庭した雑木林を見るために、時期を問わず多くの観光客が訪れている。
「財団法人 日本野鳥の会」会長(2007年10月現在)。
主な著書
『花鳥風月の里山 柳生博の庭園作法』(講談社MOOK)、『柳生 博 鳥と語る』(ぺんぎん書房)、『森と暮らす、森で学ぶ―八ケ岳倶楽部』(講談社)、『森のやすらぎ―ぼくの心身リフレッシュ法』(光文社新書)、『素朴がいい。―柳生流・生き方・育て方』(サンマーク出版)
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