アートとエコは
見えない未来を想像すること
――“持続性”ということは、エコについてもよく言われる言葉です。実際、始めることより持続することのほうが大変ですよね。
日比野: エコとアートに何が共通しているかというと、“想像力”という点だと思うんです。エコって基本的には目に見えないものじゃないですか。別に何か自分がエコ活動をしたとしても、すぐに影響が出るわけではないし。それは長い時間かかって現れてくるものだからね。だから例えば電気のスイッチ切るにしても、「俺1人がスイッチ切っても変わらないか…」って感じてしまいがちでしょう? シャワーのお湯を出しっ放しにしていても、「CO2がどうのって言ってるけど、俺ひとりぐらい関係ねえんじゃねえの?」っていう。けど、「今、お湯を出しっぱなしにしているということが…」っていう、見えない“先の先の先”の状態を想像していくとね、「(お湯を)止めておこう」という気になるでしょう? そういう“想像力”がないとエコの意識は生まれないと思う。美術にしても同じで、例えば今回作っている作品にしても、想像力がなければこんなのただの水色に塗ったダンボール箱だよね。でも想像力があるから、それが海に見えるわけです。
――その想像力を鍛えるにはどうすればいいのでしょう? やはりアート作品にたくさん触れることが大事なのでしょうか。
日比野: 必ずしも美術に触れることだけが想像力を鍛えることだけではないと思います。人間関係などにおいて、「今、僕の目の前にいるあの娘は何を求めているんだろうか」とか「どうしてあげれば彼は喜ぶだろうか」とか考えますよね。そういうのは全部想像力によるものでしょう。だから日頃の「コミュニケーション」、「人間関係」といった中で、想像力は充分鍛えていけるものだと思います。
――エコ活動に途中で飽きてしまった、ということは、自分の活動がどう地球環境に影響していくのかというイメージが徐々に薄れてしまうことも原因のひとつなのかもしれませんね。
日比野: アートにしても、最初にイメージした姿というのは、そう簡単に実際の形となって目の前に現れるものではないですからね。ある程度まで作業を進めないといけない。同様にエコもすぐに効果がでるわけではないからね。なかなか一気にはいかないですよ。僕だって小まめにスイッチを消したり、シャワーと止めたりっていうのを意識して始めたのは結構最近のことですし。でもそうやって徐々に取り組んでいけば、うまくいくものなんだと思いますよ。

アーティスト・日比野 克彦氏
日比野 克彦 (ひびの・かつひこ)氏
アーティスト。
1958年、岐阜県岐阜路生まれ。
東京芸術大学大学院修了。在学中にダンボール作品で注目を浴び、国内外で個展・グループ展を多数開催。また舞台美術やパブリックアートなど、多岐に渡る分野で活動し、アートシーンに様々な影響を与え続けている。近年は各地でその地域の特性を生かしたワークショップを多数開催しているほか、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2003」では「明後日新聞社文化事業部」を設立、同時に始まった「明後日朝顔プロジェクト」ともに現在も活動を続けている。
現在、神奈川県南足柄市にあるアサヒビール神奈川工場にて「アサヒ・エコアート・シリーズ2007 『ART VOYAGE』」(2007年12月25日(火)まで)を開催。また徳島県で開催される国民文化祭(2007年10月27日(土)~11月4日(日))へ向けて、上勝町傍示地区にて射手座造船所と名付けた船の作品を製作中。その他、金沢21世紀美術館にて日比野克彦アートプロジェクト「ホーム→アンド←アウェー」方式(2007年9月29日(土)~2008年3月20日(祝))、鹿児島県霧島アートの森にて日比野克彦展「日々の旅に出る。」(2007年10月12日(金)~12月2日(日))、熊本市現代美術館での個展「HIGO BY HIBINO」(2007年12月15日(土)~2008年4月6日(日))を開催する。
主な受賞歴に1982年第3回日本グラフィック展大賞、1983年第30回ADC賞最高賞、第1回JACA展グランプリ、1999年度毎日デザイン賞グランプリなど。
主な作品集・著作
『HIBINO』、『HIBINO2』、『海の向こうに何がある』、『100の指令』、『日常非常日(ピジョッピジョッピ)」(朝日出版社)、『えのほん』(三起商行/ミキハウス)、『KATSUHIKO HIBINO』(小学館)、『8万文字の絵 -表現することについて-」(PHP新書)、『HIBINO LINE』(玄光社)、『ひ ESSEY OF KATSUHIKO HIBINO』(淡交社)、『Yesterday Today Tomorrow』(リトルモア)、『HIBINO EXPO 2005 日比野克彦の一人万博 記録集』(水戸芸術館現代美術センター)、『FUNE』(西日本新聞社)など。
著者の関連リンク
日比野克彦 公式ホームページ
CAFE HIBINO NETWORK
この連載のバックナンバー バックナンバー一覧へ 画面先頭に戻る
- アレックス・カー氏「田舎のリサイクル」が本物の自然を取り戻す 昔には戻れないから、精神的に「卒業」するべき (2008/10/31)
- 見えてきた!EV本格普及への道[PART1]神奈川県・松沢成文知事インタビュー (2008/10/21)
- 山形大学 大学院 城戸淳二教授(後編)エコな技術、有機ELに注目!来るべき有機ELテレビの時代 (2008/10/21)
- 山形大学 大学院 城戸淳二教授(前編)エコな技術、有機ELに注目!“照明”としての大いなる可能性 (2008/10/14)
- オーシーエス代表取締役 中道雅幸氏 環境時代が求めた発送方法 「エコメール便」とは? (2008/10/07)

