エネルギー不足は
絶対量よりも使い方の問題
――公害問題の後にはオイルショックが起きています。多くの人がエネルギー問題を身近に感じた出来事だったはずですが……。
水野: エネルギーが足りないと大騒ぎになったことで、ようやくデマンドサイドのあり方が問題視されるようになりました。それまではサプライサイドの供給体制ばかりが取りざたされていましたが、オイルショックによって初めて「使い方はどうなのか?」という視点が出てきたのです。

大阪大学 名誉教授 工学博士
水野 稔 氏
物理学者のエイモリー・ロビンスは著書『ソフト・エネルギー・パス』のなかで、エネルギーの使い方を考えることが重要だと説いています。印象的だったのは「バターを切るのにチェーンソーのような大層な機械を使っているようなもの」というくだりです。
「我々は目的に合ったエネルギーの使い方をしていないのではないか」という問題提起ですね。エネルギーは足りないのではなく、使い方の問題だというのがロビンスの主張でした。
例えば、給湯に使うエネルギーは熱が得られればいいのですから、高品質のエネルギーである必要はありません。石油などを燃やして得た熱エネルギーを電気に変えて、再び水を温めるための熱エネルギーに戻すというのは、非常にもったいない話なんですよ。
デマンドサイドは、長年にわたってサプライサイドが潤沢なエネルギー供給に注力してきたおかげで、お金さえ払えば、電気でもガスでも使いたいように使っていいことになってしまいました。オイルショックはエネルギーの使い方を考える好機だったのですが、その後のバブル経済で再び大量生産・大量消費の流れに戻ってしまい、結局はうやむやになりました。
――バブル経済は1991年に崩壊しましたが、大量生産・大量消費の流れは今なお続いています。地球レベルで環境問題を考えなければならない時代に、デマンドサイドはどうすべきだと思われますか?
水野: デマンドサイドはもう少し賢いエネルギーの使い方を考えて、持続可能な都市代謝系を作っていくべきだと思います。エネルギーはサプライサイドがどんどん提供してくれて、面倒なことはディスポーズサイドが片付けてくれるという発想のままでは、問題が解決しません。
今後、デマンドサイドはエネルギーを消費するということがどういうことなのか、どんな使い方だと二酸化炭素の排出量を増加させてしまうのか、ヒートアイランド現象を含めた環境問題が起こるのはなぜなのか、といったことを、もっと深く知る必要があるでしょう。
サプライサイドは、デマンドサイドがエネルギーの使い方を考えるために必要な情報を提供していかなければなりません。そしてデマンドサイドが中心となって、従来とは違う新しいエネルギーシステムを考えていくべきだと思います。
(後編はこちらからどうぞ)
水野 稔(みずの・みのる)氏
大阪大学名誉教授。工学博士。
1943年生まれ。大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻修士課程修了、同博士課程単位修得退学。1971年、大阪大学工学部助手に就任。その後、講師、助教授を経て、1989年に大阪大学工学部環境工学科教授に就任する。2007年定年退職とともに名誉教授の称号を授与される。
環境共生省エネルギー都市、エネルギー環境情報システム、未利用エネルギー活用システムなどをテーマに、都市のエネルギーシステムに関する研究、都市熱環境の保全に関する研究(ヒートアイランド、都市、廃熱)、空調システムの省エネルギー化に関する研究などを行う。
主な著書に『環境保全』、『都市と環境』、『コージェネレーションシステム計画・設計と評価』(分担執筆)など。空気調和・衛生工学会会長をはじめ各種学協会の理事・評議員、大阪府環境審議会委員などを歴任。現在、大阪ヒートアイランド対策技術コンソーシアム理事長。
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