リコー会長執行役員 桜井正光氏 温暖化食い止めるラストチャンスだ
聞き手/神保重紀 写真/尾関裕士
――国連の気候変動のための政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書を、どう受け止めているか。
桜井 正光氏(以下、敬称略): 地球の温暖化を食い止めることと経済成長の同時実現を図るなら、これがラストチャンスだと感じている。地球人がみんなで取り組まずにこのまま先延ばしていれば、歯止めの効かない状態になるだろう。
企業にとっては地球環境保全の活動を進めると同時に、生産性を高めて高付加価値なサービスを提供していれば社会により受け入れられる。環境と経済を両立できれば、チャンスだともいえる。
――今回の報告書は、日本の多くの経営者に影響を与えそうか。
桜井: それぞれの経営者によって距離感は異なるが、話題になることは増えている。しかし、どの程度影響があるかを判断するのはまだ早い。ただ、京都議定書の公約に真剣に取り組もうという雰囲気があるのではないか。
ポスト議定書に対しての話題も出始めている。そこで絶対条件なのは全人類、すべての国が参加しなくてはならないし、目標を設定して活動してもらう枠組みをしっかりつくることだと考えている。

リコー会長執行役員 桜井正光氏
生活者の感度向上が不可欠
桜井: ただし、一般の生活者には、こうしたIPCCの報告書で明らかにされた情報はほとんど伝わっていないだろう。ここで大事なのは、消費者であったり社員であったりする一般の生活者が、地球環境の現状と、今のままだと近い将来何が起こるのかを知ることだ。
そのためには、地球がどうなっているのか、例えば耕作地が毎日どれほど砂漠化していっているのか、森林や生態系の破壊がどれだけ進んでいるのか、海面の水位がどれほど変化しているのかなど、そしてそれが我々の生活にどのような影響を及ぼしつつあるのかといったことを、テレビなどで天気予報を流すのと同じぐらいの頻度で伝えることが必要だと思う。
生活者が地球環境の悪化に今以上の感度を持てば、企業も環境保全の活動をより活発に展開するだろう。生活者はそうした企業の商品は買うが、一生懸命ではない企業の商品はまるで買わないはずだ。要するに、生活者が地球環境保全に対する努力が大事とわかれば、これが社会的価値になりその価値のもとに商品やサービスを選別していく動きになる。
――ただ、日常生活を送っていると温暖化問題は遠い世界の出来事と思う生活者が多いのが実情だ。
桜井: 確かに、はるか向こうのことと感じている人は多い。温暖化の本当の被害が出るのは20年や30年先といわれれば、実生活では何も困らない。最近、希少金属が枯渇するという話題でも、家庭の中には金属そのものがそんなにあるものではないので実感できない。ぬるま湯に入っているうちにどんどん温められ、気持ちよく寝ているうちに気付いたときには湯が熱くなっているようなことを「ゆでガエル現象」と言うが、じわじわと問題が進んでいることをもっと知らせる必要がある。
今、リコーは工場の周りに植物を植えて地球の大事さを展示したり、近くの小学校に社員が出かけて環境問題に関する出張授業を行ったりしている。リコーに限らず、多くの企業が既にそうした取り組みを実施しているのはそのためだ。
そのなかで企業はやはり、率先して地球環境問題に取り組むべきだ。そうすれば社員は、会社の中だけではなく家庭に帰っても環境に優しい生活様式を心がける。会社で環境問題に取り組んでいるのに、帰宅したら大量消費・大量破棄にがらりと変わるとは考えられない。親の態度を見ていれば、だんだん子供も教育されていく。そうしていけば少なくとも家族や親戚の範囲、もしくは地域の範囲で取り組みは広がっていくはずだ。
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