一般家庭約200軒分の電力をまかなう水力発電所
――両者の違いをお伺いする前に、まずは落合楼発電所の概要から教えてください。
松本: 落合楼発電所は、本谷川(ほんたにがわ)と猫越川(ねっこがわ)が合流した狩野川(かのがわ)の水流を利用しています。上流から流れてくる水を堰堤(えんてい)で堰き止め、その横にある取水口から取り込みます。取り込んだ水は地下にある導水路を通って、発電所内に設置したプロペラ状の羽根のついた水車へと流れ込みます。
流れ込んだ水の力で水車とそれに連結している発電機を回して、電気に変換しているわけです。最大出力は100kW、年間発生電力量は約76万kWh。これはおよそ一般家庭200軒分の電力量に相当します。
発電に使用する水量は平均して毎秒3tですが、実は河川の場合、流れる水のすべてを発電に使うことができません。狩野川では通年で毎秒0.25tは川として流れていなければならず、上流から流れてくる水量が少なければ、発電所に取り込む水を減らして川の水量を保つようにします。これを「維持流量」といいます。生態系と周囲の環境を守るための制度です。
堰堤の間には「魚道(ぎょどう)」と呼ばれる段々の付いたスロープがあり、通常の川の流れを確保すると同時に、生態系を守る働きをしています。狩野川は鮎や岩魚の生息地として有名ですが、シーズンになると産卵のために魚が溯上するんですよ。その際、魚道がないと遡上できません。
ところが、落合楼さんでは発電所が停止してから10年以上にわたって、こうした一連の施設は手を入れられることなく放置されていました。取水口に流木が引っかかったり、大雨などで上流から流れてきた大きな石が堰堤付近にゴロゴロと転がっていたり……。川がうまく流れていない状態だったのです。その頃はおそらく、鮎や岩魚はほとんど見られなかっただろうと思いますね。

発電所を再生する前の取水口付近の風景。取水口には流木や枯れ木が引っかかり、川岸には大量の石が転がっている。これらが水の流れを遮っているために、川として十分に機能していない様子が見て取れる。(写真提供:東京発電)

現在の取水口付近の風景。流木や石を取り除いて整備したことで、川の流れがスムーズになった。今では鮎が魚道を溯上する姿も定着し、下流では釣り人が鮎の共釣りに興ずる風景も見られる。
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