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自然と“自転車的なるもの”が
好きになっていく

――自転車は「動力源が化石燃料ではなく、二酸化炭素(CO2)を排出しない」といった意味合いから環境に良いとされていますが、どうやらそれ以外の側面もあるようですね。

自転車ツーキニスト 疋田 智氏

自転車ツーキニスト 疋田 智氏

疋田:  確かに自転車は“エコ”と相性がいいと思います。単純にCO2の問題ではなくて、人間の「これくらいでいいじゃん」「このくらいのほうが気持ちいいよ」という感覚を蘇らせてくれるという意味でね。例えば、クルマで移動する場合は、エアコンの効いた室内で渋滞の中をノロノロと運転して、時々「太ってきたな」などと思ったりしますよね。それは果たして本当に“快適”なことなのでしょうか。

都会に暮らしていると、通勤で満員電車に乗りたくないと思うことは誰にでもあるでしょう。私も雨の日は安全性を考慮して自転車ではなく、電車に乗りますが、今ではそれがとても苦痛でね。自転車の気持ちよさにハマると、“自転車的なるもの”が身体になじんでいって、それ以外のものが好きではなくなります。そういう感覚は私だけではなく、自転車を楽しむようになれば、誰でも持てると思いますよ。

――“自転車的なるもの”について、もう少し詳しく教えてください。

疋田:  等身大というのかな。先ほど申し上げたような、使い捨てや無駄遣いをしなくなることであったり、「もったいない」と思うことであったり、「これくらいが気持ちいい」という感覚であったり。自転車に乗り始めると、なぜかそれが染み付いていくんです。私自身もエコだの環境だの、そういうことを言う人間ではありませんでしたが、少しずつ変わっていきました。

また、自転車に乗ると見える世界も変わります。例えば、赤坂から麹町へ行くとしましょう。地下鉄だと何本か乗り継がなければなりませんが、自転車ならあっという間に移動できます。実は赤坂と麹町はとても近いんですよ。でも、東京にはたくさんの駅があって、私たちは駅とその周辺という点の間を移動しています。それが自転車に乗ると、点と点が線になって、面になって、ひとつの街になっていくんです。

それはすごく気分の良いことでね。東京という街がすごく身近に感じられるし、電車やクルマだと通り過ぎてしまう景色が見えてきます。道中で気になるスポットがあれば、すぐに止まれるのも自転車の良さで、「あそこに行列のできるラーメン屋があるんだ」と気付いたりもする。クルマだと駐車する場所を見つけるだけで一苦労ですから、面倒くさいでしょう。そういった新しい発見ができるのも、自転車通勤ならではの魅力だと思いますね。

自転車ツーキニスト 疋田 智氏

自転車ツーキニスト 疋田 智氏

後編はこちらからどうぞ)

疋田 智(ひきた・さとし)氏

1966年、宮崎県生まれ。東京大学文学部卒業後、TBSテレビに入社。報道記者、「筑紫哲也のニュース23」のディレクターなどを経て、現在はTBSテレビ情報1部プロデューサーとして活躍中。10年超におよぶ自転車通勤の経験を生かして、国会の私的諮問機関「自転車活用推進研究会」理事など、公的な活動も精力的に行う。

著書に『自転車ツーキニスト』(光文社)、『銭湯の時間』(朝日出版社)、『自転車生活の愉しみ』『サドルの上で考えた』(東京書籍)、『快適自転車ライフ』(岩波書店)、『天下を獲り損ねた男たち(続・日本史の旅は自転車に限る!)』(枻出版)などがあるほか、雑誌『バイシクルクラブ』『自転車生活』(枻出版)などにてコラム連載中。

ウェブサイト:『自転車通勤で行こう!』、メルマガ『疋田智の「週間 自転車ツーキニスト」』でも自転車通勤に関する情報を発信している。

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