サステナブルな社会を築くことは
今ある社会の枠組みを壊すこと
──しかし、そうしていったとき、日本の経済的な発展というのは止まってしまいませんか?
益田: もちろんです。サステナブルというのは、“今の”文明や経済を持続させるという意味ではないんです。最近では、「サステナブルな社会」という概念は一般的にも広まってきていますが、多くの場合、そこのとらえ方が間違っているんですよね。
サステナブルというのは、今の文明は持続可能ではないのだから、それはもうやめて、持続可能な新しい枠組みを探そうということなんです。既に破たんした今の枠組みに代わる、次の新しい枠組みを作らなければいけない。「持続可能な社会を築く」ということは、今ある文明の枠組みを否定することなんです。
そのためには、“循環”という概念が重要になってきます。循環の範囲を最大限に大きくとらえていけば、地球規模になります。素材やエネルギーを地球規模で循環させる。その循環の中にうまくはまる仕組みを作っていけば、サステナブルな社会になっていくんですが、今はそうなっていないわけですよね。
もし地球上の人類すべてが今の先進国のような大量消費型の生活スタイルになるとすると、地球が3個も4個も必要になるだろうといわれています。しかし、どうあがいても地球は1個しかないのです。そんな非現実的な経済発展という幻想は改めて、身の丈というか、日本人なら、まずこの「日本列島」というスケールの中で生きていくことを考える。そういうプリミティブ(原始的)な生き方を原点にして、どれだけ他人に迷惑をかけずにやっていけるかが重要になってきていると思います。
──デザイナーという立場からは、どんなアプローチが可能でしょうか。
益田: 僕がデザイナーとして考えるのは、新しい価値観の提供です。新しい社会を作っていくために必要なものだなと思えば、それはどうしても作りたい。このインドネシアの木で作られているラジオもその1つですね。

益田 文和 氏
インダストリアルデザイナー
(株)オープンハウス 代表取締役
東京造形大学 デザイン学科 教授
このラジオを作ることでインドネシアが少しでも良くなるなら、その木を使いたいと思う。そして、人々にもそのメッセージを伝えていきたい。「エコみやげ」のサイトでやっているのは、そういう一種の呼びかけなんですね。その製品の背景にあるストーリーや、それを使う意味、価値観まで含めて、「こんなのって、どう?」という提案をしているんです。
その呼びかけに気付いてくれた人は、これまでは「今、欲しいか、欲しくないか」という価値基準だけで物を買っていたのが、「このラジオを買うことで、インドネシアのものづくりを応援したい」という気持ちに変わっていく。
その製品の持っている意味を知ることで、それを「買って、使う」ということに新しい価値が生まれる。すると、作る側にとっても、今まで考えてもみなかったことが商品としての価値を持つようになっていきます。
そうやって、作ることと、所有すること、使うことが相互に連動しはじめると、たんに「きれい、欲しい」というだけだった消費スタイルが、少しずつ変わっていくんですね。
だから「その製品を作って、どうしたいのか」という視点がとても重要だし、そういう視点を、デザイナーは求められていると思います。
(前編はこちらからどうぞ)
益田 文和(ますだ ふみかず)氏
インダストリアルデザイナー。株式会社 オープンハウス代表取締役。エコデザイン研究所代表。東京造形大学デザイン学科教授。1949年、東京都に生まれる。1973年、東京造形大学デザイン学科卒業(インダストリアルデザイン専攻)。国土建設株式会社を経て、株式会社デザインオフィスBACSに勤める。1978年にデザイン事務所インデクスを設立、以後フリーランスデザイナーとして活動。1991年に株式会社オープンハウスを設立。地球環境を見据えたエコデザイン、サステナブルデザインをテーマに幅広く活動。プロダクトデザインのほか、企業へのデザインコンサルティング、日本各地での地場産業開発、国際的な各種プロジェクトにも携わる。日本産業デザイン振興会グッドデザイン賞審査委員(1988年~)。日本デザインコンサルタント協会代表幹事。O2 Global Network 日本代表。日本デザイン学会会員。第6回国際デザイン・リソース・アウォード・コンペティション 2002-2003審査委員。共著書に『戦略環境経営 エコデザイン ベストプラクティス100』(ダイヤモンド社)他。
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