「どうデザインするか」ではなく
「何をデザインするか」という視点
──益田さんご自身については、いかがでしょうか。デザイナーという立場でエコデザインの第一線にあるわけですが、何を目指して、どんなアプローチをされていらっしゃるのでしょう
益田: 僕が今考えているのは、どういうデザインをするかではなくて、「何を」デザインするか、ということです。
例えば、このラジオを見てください。筐体(きょうたい)が木で出来ていますよね。これはインドネシアの木で作られているんです。

筐体が木で作られているラジオ
インドネシアでは、熱帯雨林の伐採が問題になっています。日本などの先進国が紙パルプや木材を大量に輸入・消費するため、現地では目の前の森が消えてゆきます。しかし、インドネシアでは1本の木があれば、職人さんが1年間、仕事で困らないほどの素材になるそうです。それくらい貴重なものなんですね。
つまり、ここに「1本の木が、1人の人間の1年分の生活を支えることができる」という事実があって、このラジオはそういう貴重な「木」で作られている。だけど、それはもしかしたら、オフィスでちょっとコピーに失敗しただけで、使われもせずに捨てられてしまう「木」になっていたかもしれない……。
どんな製品にも、そういうバックグラウンドの“ストーリー”があります。ですが、大量生産・大量消費型の生活に慣れてしまうと、そこまで意識がいきません。そうやって気付かないうちに、森林のような地球環境、さらにはそこに暮らしている人たちの生活をも破壊している。それは現地のサステナビリティ(持続可能性)を破壊することでもあるんです。

益田 文和 氏
インダストリアルデザイナー
(株)オープンハウス 代表取締役
東京造形大学 デザイン学科 教授
これは一見ただのラジオですが、インドネシアの森林伐採や雇用という社会問題や、そこに住む人たちの文化、価値観を背景に持っているわけです。そして、このラジオを作ることが、現地のサステナビリティにもつながっていく――先ほどお話した燕市や、その他の地方の中小企業でも同じです。そこまで含めてのデザイン。「何をデザインするか」というのは、そういう意味です。
すると、単に「環境負荷が低い」というだけではない、もっと大きな意味での「エコデザイン」の世界が現れてきます。僕はそういうデザインをしていきたいですね。
(後編はこちらからどうぞ)
益田 文和(ますだ ふみかず)氏
インダストリアルデザイナー。株式会社 オープンハウス代表取締役。エコデザイン研究所代表。東京造形大学デザイン学科教授。1949年、東京都に生まれる。1973年、東京造形大学デザイン学科卒業(インダストリアルデザイン専攻)。国土建設 株式会社を経て、株式会社 デザインオフィスBACSに勤める。1978年にデザイン事務所インデクスを設立、以後フリーランスデザイナーとして活動。1991年に株式会社 オープンハウスを設立。地球環境を見据えたエコデザイン、サステナブルデザインをテーマに幅広く活動。プロダクトデザインのほか、企業へのデザインコンサルティング、日本各地での地場産業開発、国際的な各種プロジェクトにも携わる。日本産業デザイン振興会グッドデザイン賞審査委員(1988年~)。日本デザインコンサルタント協会代表幹事。O2 Global Network 日本代表。日本デザイン学会会員。第6回国際デザイン・リソース・アウォード・コンペティション 2002-2003審査委員。共著書に『戦略環境経営 エコデザイン ベストプラクティス100』(ダイヤモンド社)他。
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