技術だけで環境問題を解決することはできない
──少し質問を変えます。ずばり、技術で環境問題は解決できますか? アメリカには技術の進歩によって解決可能だとする意見が多いですし、ブッシュ政権は二酸化炭素排出の問題に対して、地中埋蔵などの研究開発が進んでいることをアピールしています。
安井: 技術が進めば解決できるとは思いますが、ひとつ確かなことは“技術だけでは解決できない”ということ。技術によるところは少なく見積もって50%、あとはそれを受け入れるための社会システムの構築が不可欠で、こちらも50%くらい必要。技術無しで環境問題を解決できるというのは戯言に過ぎませんが、技術だけで解決できるというブッシュ的な発言もまた、戯言だと思いますね。
なぜなら、新しい技術が生まれたとして、その技術を活用、推進していくコストは社会全体で負担しなければならないからです。かつては産業育成の名目で工場に太陽電池を設置する補助金を交付していましたが、これからはそういった補助金を「未来社会のため」という名目で社会が負担できるかどうか、これがカギになるでしょう。
日本は一時、世界最大の太陽電池所有国になりましたが、補助金がなくなったことでドイツに抜かれました。ドイツは未来社会への貢献を理解する一般市民が増えたし、それを謳う政治家も増えましたから、思い切ったことができたのでしょうね。やはり政治家が近視眼的になりすぎるのは問題です。

国際連合大学 副学長 安井 至氏
──それでは最後に、安井先生から読者へメッセージをお願いします。
安井: 講演でも言っていることですが、こういった話を聞いたり読んだりして「わかった」「面白かった」と感じたら、ぜひその話を他の人にしてみてください。人間は「こうする方が良い」とわかっていても、自分の行動をなかなか変えられないものです。人間には「話を理解する」ことと「自らの行動を変える」ことの間に、「他者へ話す」というステップがありますから、行動に移せなくても、話すところまではぜひ実行してほしい。
ただ単に「面白かった」で終わってしまえば、何もなかったのと同じことです。家族でも、親戚でも、同僚でも、隣近所でもいい。誰かに話してください。それで「お前の話はおかしいよ」といわれたら、それはきっとまだ理解できていないのでしょう。逆に、相手を説得できたら、それは素晴らしいことではありませんか。
私の場合、息子や娘はよくわかってくれるのですが、カミさんを説得するのだけは難しくてね(笑)。それでも誰かに話すことは何かを変える第一歩になると思います。
──ありがとうございました。
(前編はこちらからどうぞ)
安井 至(やすい・いたる)氏
1945年生まれ、東京都出身。1973年東京大学大学院修了、同年5月、東京大学工学部助手となる。その後、東京大学工学部講師、米国レンセラー工科大学博士研究員を経て、1979年6月に東京大学生産技術研究所の助教授に就任する。1990年、同研究所教授就任。さらに、東京大学国際・産学共同研究センターのセンター長、全国産学連携センター協議会会長などを経て、1999年9月に東京大学生産技術研究所教授へ復帰。2003年12月より、国際連合大学副学長に就任する。現在は東京大学生産技術研究所・客員教授でもあるほか、(社)環境科学会副会長、環境省中央環境審議会政策部会臨時委員なども務めている。専門分野は無機材料化学、環境科学、産学共同研究。
著書に、「環境と健康」(丸善)、「リサイクル 回るカラクリ、止まる理由(ワケ)」(日本評論社)、「環境科学-人間と地球の調和をめざして」(東京化学同人)、「ごみの本」(ポプラ)など多数。現在、日経エコロジーにて「安井至のエコミシュラン」を連載中。
また、ウェブサイト「市民のための環境学ガイド」にて、さまざまな環境問題についての情報を発信している。
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