国際連合大学 副学長 安井 至氏 インタビュー(前編)環境問題を解くカギは未来への“知的想像力”
●未来の地球に思いを馳せてみてほしい。子供や孫の世代ではない。もっと先の未来、たとえば300年後の世界だ。そのとき、地球はどうなっているだろうか。エネルギー問題、異常気象、人口増大、食糧問題、そして地球温暖化問題……。我々の前に立ちはだかるこれらの課題に対して、人類は300年の間に何らかの答えを見出しているだろうか。あるいは300年後に地球が在るために、今を生きる我々は何をすべきだろうか。
●「未来への想像力こそ、人間がもっとも持つべきものである」と国際連合大学副学長の安井至氏はいう。一人ひとりの人間は何十億年と続く地球の歴史から見ればほんの一瞬に過ぎない。だからこそ、“知的なもの”を未来世代へ受け継ぐことが、人間が生きる唯一の意味だ――そう語る安井氏のインタビューを前後編にわたってお届けする。
聞き手/土屋 泰一 文/林 愛子 写真/佐藤 久
国連の組織である国連大学が果たすべき役割とは
──まずは先生が副学長を務める国際連合大学(以下、国連大学)について、教えてください。
安井氏(以下、敬称略): 国連大学はその名のとおり、国連機関です。大学といっても学生や教授はいなくて、東京都渋谷区にある本部のほか、世界13ヶ所の研究・研修センターでは途上国を対象とした能力開発、いわゆるキャパシティビルディングの研究を中心に行っています。視点はあくまで国連で、利益は追求しないというスタンスですね。
そのなかでも、私は「環境と持続可能な開発プログラム」を担当しています。国連にとっての「持続可能な開発」とは、2000年のミレニアム・サミットで掲げられた「ミレニアム開発目標(MDG)」の“8種のゴール”と、2002年のヨハネスブルグ・サミットでコフィー・アナン国連事務総長(当時)が提案した“WEHAB(水:Water、エネルギー:Energy、保健:Health、農業:Agriculture、生物多様性:Biodiversity)”がベースになります。
──もともと先生は環境がご専門なのですか?
安井: いえ、もともとは無機材料化学が専門です。そこから環境問題に踏み込んだのは、4年前まで教授職を務めていた東京大学生産技術研究所(以下、生産研)が文部科学省の環境教育の中心地だったからです。生産研に環境科学特別研究のプロジェクト事務局が置かれることになった当時は、公害問題が続発した時期でしたから、「公害は化学と関係が深い」という理由で、私もそこに引っ張り込まれたわけです(苦笑)。それまでは環境問題に対して、私自身、特段に高い意識を持っていたわけではありませんでした。

国際連合大学 副学長 安井 至氏
──先生のなかで環境への意識が変わるきっかけのようなものはあったのでしょうか?
安井: 劇的な出来事があったわけではなく、プロジェクトでの活動を通して少しずつ意識が高まっていったという感じですね。1993年からの5年間は、鈴木基之先生(現・中央環境審議会会長)の後を引き継ぐ形でプロジェクトの代表職を務めましたが、もちろんそれ以前から各種の企画に携わっていますから、結局10年以上関わったことになります。
余談ですが、実は国連大学副学長も鈴木先生の後任なんです。何か新しいことに挑戦したいと思っていた私に、鈴木先生が「視野が広がるから、国連大学の副学長公募に申し込んではどうか」とアドバイスしてくれましてね。100名くらいの候補者から選ばれて、2003年11月に現職に就任しました。4年任期なので、今年の秋まで務めることになります。
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