トップダウンによる政策が「パーク&ライド」を成功へ導く
──パーク&ライドを実施するメリットとしては、都市の良いところが顕在化し、なおかつ環境負荷を抑えられることだと考えていいでしょうか?
中村: 多くの場合はその考え方で正しいと思います。ただし、一部にはこの理論に当てはまらない例もいくつかあるので、完全に言い切ることはできません。
例えば、国内のある場所でパーク&ライドを実施したところ、駐車場の利用者はそれなりに多く、盛況でした。ところが、利用者が以前使っていた交通手段を調べてみると、実は駅までバスを使っていたことが判明したのです。これでは逆に車の利用台数が増え、さらにバス会社の経営が逼迫(ひっぱく)してしまいます。
──確かに日本ではバス会社の衰退が目立ち、一方で東京などでは明らかに車の台数や1台あたりの走行距離も増えています。これは、日本の風土にパーク&ライドが適していない?とも思えてしまいます。
中村: 残念ながら、今の日本では、パーク&ライドが役立っている例が多いとは必ずしも言い切れません。
ここで必要なのは、“誰”を対象とし、“どのような”行動をしてもらいたいかがきちんと正しく考えられているパーク&ライドです。ターゲットの絞り込みが上手くできていて、なおかつデザインが徹底されていれば、成功するでしょう。
単に駅前に駐車場を用意して、駐車場が車で一杯になれば儲かった、というのでは、ただのビジネスでしかありません。先ほども言いましたように、利用者が既にバスを使っているのであれば、パーク&ライドで駅前に駐車場が出来ることでバス会社が損害を被りますし、車の台数が増えることで環境にも悪影響を及ぼします。
ですから、利用者や駐車場だけでなく、電車やバスなどあらゆる関係者が“Win-Win”になるデザインが求められるのです。
日本では“縦割り”の社会構造も大きな問題です。地域的に分断されている部分もありますし、何より駐車場や道路計画、公共交通といった役割が完全に分かれてしまっている。本来であれば、NPO(非営利団体)や行政など何でも構わないのですが、ある組織が全体を横断的に横串で考えて実行することが必要でしょう。街づくりでいう「エリアマネージメント」ですね。
「駐車場の経営者は、バス会社のことを考えない」——もちろん各自が経営だけの視点で考えれば、それはそれでもいいのかもしれません。基本的に競争原理の下で経済社会が成り立っているのですから。ですが、地域の状況を含め、色々な要因、要素を全体的に考慮して、関係者全員が“Win-Win”になるよう各自できる範囲で努力すべきです。
そのための“音頭取り”というか、“Win-Win”になるような仕掛けづくりを誰かが行わなければいけません。

横浜国立大学 大学院工学研究院 システムの創生部門 中村文彦教授
──その仕掛けづくりは、具体的にどのようにして進めたらよいのでしょう?
中村: 個人的な意見としては、間違いなく、知事や市長など組織の長となる人物、つまり首長による指示が有効だと考えます。
中堅どころの方が具体的なアイデアを出しても、前例がないなどの理由によって途中でストップしてしまうケースが多いのです。しかし、首長が大きな指針を掲げてトップダウンで指示を出せば、その下で働いている人たち、周囲の関係者などは動きますよ。
特にNPOなどが実施する仕掛けには、どうしても制度や行政が入ってきますから、最終的に首長が動かなければ始まらないでしょう。
もちろん福岡のように、現場主導型で行われているケースもあります。しかし、それを次の段階へ移行したり、環境面などからさらにもう一段階上がるようなアプローチを取り組んだりするなどであれば、やはり首長のトップダウンアプローチ、大きな方針、方向性、さらには関係者を巻き込んで進めていく力が求められるでしょう。
──最後に、個人の利用者自身が行えるパーク&ライドに関する取り組みはあるのでしょうか?
中村: 「自分にとって一番良い移動手段とは何か?」を冷静に考えるというのは面白いと思います。
例えば、そうですね。車移動に固執するのではなく、渋滞していたら少し手前のコインパーキングへ停め、そこからちょっと歩いて電車に乗るという方法はいかがでしょう。自分にとって最適な移動方法をもう一度見直してみるのは、とてもいいことだと思います。
そういった意味で、バスや駐車場などの情報がインターネットで確認できる現代社会は非常に便利です。たとえ車に乗っていても、カーナビを使えば駐車場の情報を簡単に検索できます。また、現在の日本にはそれなりに駐車場が用意されてきていますし、鉄道をはじめとする便利な公共交通がいくつも存在しています。
利用者側が、もっと積極的に車以外の移動手段について調べてみるのもいいと思いますね。
──どうもありがとうございました。
(前編はこちらからどうぞ)
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