利用者が“便利”だと思えるパーク&ライド──これが最優先ですね(後編)
●街づくりの側面から「都市の中の交通」について研究を行っている横浜国立大学 大学院工学研究院 システムの創生部門の中村文彦教授。人々が“移動”する際には、必ず交通手段を選んでおり、現代では車以外の選択肢があまりに使いづらいために、車の利用機会が多くなっていると分析する。今後、ほかの交通手段をいかに使いやすくしていくかが大きな課題であると同時に、研究対象として興味を引かれる部分でもあるという。
●パーク&ライドは大きく、観光地などに多くみられる「ビジター向け」と、日常の「通勤者向け」という2種類に分類できる。通勤者向けでは、金額よりも乗り換える電車やバスの移動の速さと本数、ビジター向けでは利用料金とシステムの分かりやすさがポイントとなる。ただし、どちらも車から公共の交通機関に乗り換えた方が、利用者にとって「ありがたい」「得をする」というシステムであるかどうか――。そのデザインが重要だ。
●前編では、国内での具体的な事例を踏まえながら、パーク&ライドで重視される要素を中村教授に聞いた。そこで後編では、積極的な対応を実施している海外の事例や、国内における取り組みの指針(ガイドライン)などについてお伝えする。
(前編はこちらからどうぞ)
聞き手/土屋 泰一、荒木 孝一(エースラッシュ)、林 愛子
文/荒木 孝一(エースラッシュ) 写真/佐藤 久
パーク&ライドの発祥は、自動車王国の米国
──そもそも、パーク&ライドという考え方は、どこから生まれたものなのでしょうか。
中村氏(以下、敬称略): 諸説ありますが、パーク&ライドの発祥は1950年代の米国だと思います。ただし、当時は大々的に注目を集めたというわけではなく、本格的に取り組みが始まったのは1970年代、ちょうどオイルショックのときですね。
オイルショックへの対応として、米国政府が様々な政策を打ち出しました。その中の1つに、「エネルギー危機を回避するために、車の使い方を見直そう」という方策があり、ここからパーク&ライドの活動が本格化していきました。
とはいえ、広大な土地にゆったりとした住居を構えて生活している米国ですから、車を全く使わない訳にはいきません。そこで、駅やバスターミナルまで車で行き、その先は電車やバスなどの公共交通を利用するというパーク&ライドに注目が集まったのです。

横浜国立大学 大学院工学研究院
システムの創生部門 中村文彦教授
──意外ですね。米国のように、あれだけ広大な土地があれば駐車場には困らないでしょうし、なおかつ日本のように公共交通が緻密に運行されている訳でもない……。
中村: 1930年代から40年代の米国では、あちこちの街で路面電車が利用されていましたが、いわゆる「モータリゼーション」の到来と共に、大半がなくなりました。路面電車の代用としてバスを導入したものの、居住、商業そして業務機能の順に郊外へ移行し、それにしたがって都心部が衰退していったんです。
一方、都心再生のために駐車場を増やしたところ、今度は渋滞の発生を招く結果となってしまいました。あの広大な土地で暮らすことを考えると、車社会は否定できません。そこで環境負荷の低減というところまで含めて考えたとき、公共交通を組み合わせるパーク&ライドが誕生したと解釈できるのではないでしょうか。
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