第17回
大気・水質汚染防止で排出権 省エネCDMを促す効果も
水野勇史 財団法人・地球環境戦略研究機関(IGES)気候政策プロジェクト シニアエキスパート
環境省が提唱している「コベネフィットCDM(クリーン開発メカニズム)」は、これまでのCDMと何が違うのでしょうか。(建設・事業開発)
「コベネフィット」とは日本語で、「相乗便益」などと翻訳されます。「ある目的のために進めたことが、別の目的の達成にも貢献する」ということを意味します。
温暖化は経済活動や生活に密着した問題であるため、全く別の目的のために進めた対策でも、結果として温暖化対策に貢献したり、また、逆のケースもあり得ます。例えば極論かもしれませんが、途上国で人口増加を抑制する少子化政策は結果的にエネルギー消費量を減らし、温暖化防止に役立つという意見もあります。
環境省が提唱するコベネフィット(以下、コベネ)の定義は、環境汚染対策と温暖化ガス削減を両立させること。これを実現するCDM事業を、「コベネCDM 」と呼んでいます。
具体的には、途上国の火力発電所に排出ガス浄化設備を設置しつつ燃焼効率を改善したり、交通対策を進めるなど、大気汚染物質の排出を抑えながら同時にCO2も削減できる事業を想定しています。
CDMとして認められれば、これを手がける企業は排出権の売却益を得られ、途上国にとっては、経済成長が著しい中、環境汚染対策の促進を期待できます。
環境省はコベネCDMを促進するため、2008年度予算で初期投資額の半額を補助する事業(補助金総額3億円)を要求しています。ただし、補助金額に応じて排出権を政府に引き渡すことが求められます。
環境省は大気汚染防止のほか、水質汚染や廃棄物対策とメタンの削減を両立する事業や、オゾン層保護対策と代替フロンの削減を両立する事業などを進めるとしています。温暖化ガス削減効果だけでなく、他の環境汚染を防止する効果も高い事業が、コベネCDMとして認められます。
これまで、中国など途上国の環境汚染対策は、円借款などを利用して進められていました。ところが、日本から特に中国への新規の円借款は来年にも打ち切られる見込みです。コベネCDMはこれを補いながら、排出権の確保も狙う意図があります。
火力発電所での燃焼効率の改善や交通対策は、代替フロンの回収によるCDMなどに比べて獲得できる排出権の量が少なく、CO2の排出削減だけで評価すると、費用対効果が相対的に低くなってしまいます。
しかし、他の環境汚染の改善効果を同時に評価して設備補助をすることで、環境対策事業としては費用対効果を高めることができます。つまり、コベネCDMは、従来ならば手を付けにくかった分野のCDMを促進する効果も期待できそうです。

上記の記事「大気・水質汚染防止で排出権 省エネCDMを促す効果も」は、『日経エコロジー』2007年11月号に掲載された特集です。なお、記事中に記載した内容については、『日経エコロジー』2007年11月号掲載時の内容となっております。
『日経エコロジー』は環境経営やCSR(企業の社会的責任)推進体制の構築、ISO14000の導入・運用を担当される方々に向けた、月刊ビジネス誌です。
『日経エコロジー』のコンテンツや最新号の記事エッセンスなどについては、こちらのサイトでご覧いただけます。
また『日経エコロジー』の年間ご購読の申し込みは、こちらで承っておりますので、どうぞよろしく願い致します。
この連載のバックナンバー バックナンバー一覧へ 画面先頭に戻る
- 第19回 2013年、CDMはどうなる。新枠組みでも継続に期待 (2008/03/07)
- 第18回 ODAを使ったCDM事業 エジプトの風力発電で先例 (2008/01/29)
- 第17回 大気・水質汚染防止で排出権 省エネCDMを促す効果も (2007/12/11)
- 第16回 中小のCO2削減で排出権 来年度にも本格的に開始へ (2007/11/16)
- 第15回 EU型規制導入のリスクは?不公平感無くす措置も可能 (2007/09/21)

