第16回
中小のCO2削減で排出権 来年度にも本格的に開始へ
回答者/水野勇史 財団法人・地球環境戦略研究機関(IGES)
気候政策プロジェクト シニアエキスパート
「中小企業版CDM 」とは、どのような制度ですか。CO2削減効果はあるのでしょうか。(製造・経営)
経済産業省は、中小企業などがCO2削減対策を進めると、その結果として削減された量と同量の「国内クレジット(排出権)」を獲得できる制度の創設を検討しています。京都議定書が認めるCDM(クリーン開発メカニズム)と似た制度といえます。
この国内排出権は、日本経団連による「自主行動計画」の目標達成や、CSR(企業の社会的責任)を果たすなどの目的で、大手企業が中小企業から買うことが想定されています。
多くの中小企業では資金調達や技術制約などの問題があり、CO2削減が進んでいません。この制度は、排出権を調達したい大手企業が、取引先の中小企業に持ちかけるケースが考えられ、大手から中小への省エネ技術の提供が期待されます。また、売却できる国内排出権を与えることで、対策を後押しできます。
制度の支援対象には、ボイラーなど設備の燃料転換や、高効率給湯器の導入、空調や照明の省エネなどが想定されています。ただし、例えば投資回収に2年以上かかるなど、通常なら取り組まないような対策であることが条件です。
この制度には検討すべき課題もあります。例えば、CO2の削減量の算出方法です。現在、考えられている方法では、(1)対策を進めた後で排出量を計測し、一方で、(2)「対策をしなかったら、どの程度の排出量になったのか」を仮定し、(2)から(1)を差し引いた分を削減量とみなします。この方法はCDMでも採用しています。
しかし、この方法では(1)の排出量が、対策を始める前より増えてしまった場合でも、(2)を下回っていればCO2を削減したとみなされ、排出権を獲得できる可能性があります。こうしたケースは、対策後に生産量や稼働時間が増えた場合に起こります。
実は、この制度と似ているCDMでも、同じことが起こります。CDMは排出量の上限が無い途上国で進めるので、排出増が問題にはなりません。しかし、日本は京都議定書で排出量の上限が決まっているので、絶対値で減らす必要があります。
この制度で確実にCO2削減効果を出すには、例えば「京都議定書目標達成計画」の総量による産業部門の削減目標以上に削減し、目標を上回る削減分に対して排出権を発行するなどの方法が考えられます。しかしその場合、排出権の獲得が困難で、制度が活用されない恐れもあります。
経産省は引き続き検討を進め、来年度から制度を始めたいとしています。成果を上げた中小企業が、国内排出権という報酬を獲得できる点で「努力した者が報われる」制度です。よりよい形での推進が望まれます。

上記の記事「中小のCO2削減で排出権 来年度にも本格的に開始へ」は、『日経エコロジー』2007年10月号に掲載された特集です。なお、記事中に記載した内容については、『日経エコロジー』2007年10月号掲載時の内容となっております。
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