第4回
今年も議論始まる環境税
排出抑制より財源に重点
回答者/パシフィックコンサルタンツ・上席コンサルタント 水野勇史
ここ数年、環境省は税制改正要望に環境税の導入を盛り込んでいますが、どのような制度ですか。導入の可能性はありますか。(製造・開発)
環境税は、政府が化石燃料の使用を抑制するために用いる経済的手法による環境対策の1つです。同じ経済的手法である排出権取引などに比べて制度設計と実施にかかる行政コストが安く、産業界だけでなく消費者まで広く制度の対象になる点が環境税の特徴です。
2004年、環境省は「税制改正要望」で「環境税の創設」を盛り込み、具体的な提案をしています。2005年10月の提案内容は、家庭やオフィスで使う灯油などのほか、工場や発電設備などで使う石炭や天然ガス、重油などの化石燃料の利用を課税の対象としています。

2005年10月の環境省「環境税の具体案」を基に編集部作成。ただし、ガソリンは当面、適用しないとしている。今後、変更の可能性もある
税率は、燃料を燃焼した時に排出される炭素1t当たり2400円で、家計の負担は1世帯当たり月額約180円と試算しています。税収を森林整備や自然エネルギーの導入支援などの温暖化対策に使うことで、CO2の排出削減を目指しています。
環境税を巡っては様々な議論があります。主な論点の1つは、国内産業の国際競争力への影響についてです。
企業への課税は商品コストの増大につながります。商品の国際的な競争力を考えると、価格への影響を抑えるべく化石燃料の用途に応じて減免税措置を設ける方法もあります。
欧州では1990年のフィンランドでの導入後、北欧諸国や英国、ドイツなどが同様の税を導入していますが、用途に応じて免税したり税率を変えています。2005年の環境税案でも、CO2削減に努力した企業の減税と、製鉄用のコークスの免税などを盛り込んでいます。
また、環境税の導入に併せ、所得税など既存の税を見直したり、社会保険料の負担を軽くするなどして国民の負担は増減させない「税収中立」を図っては、という議論もあります。国民の理解を得やすい方法ですが、環境税案は税収中立ではなく、税収増分を温暖化対策の財源に充てるとしています。
議論のもう1つの論点は、実際に温暖化防止効果が得られるのかどうかを問うものです。「より高率の税でないと化石燃料の使用抑制につながらない」との声が上がっています。
代替が難しいガソリンなどでは、価格が多少上がっても短期的には使用の抑制効果は働きません。例えば日本エネルギー経済研究所によるとガソリン価格(全国平均)は2004年1月には100円でしたが、今年6月は137円。2年前に比べて排出される炭素1t当たりで見ると5万8000円程度の負担増ですが、販売量は昨年度、21年ぶりに前年度比0.1%減少(経済産業省の統計による)したにとどまっています。
現在の環境税案は価格上昇による消費抑制効果よりも、低率ながら税収を温暖化対策の財源に充てることで、温暖化ガスを90年比で約3.5%削減(環境省の試算)できるとしています。
環境省は2006年も8月末に発表した税制改正要望に、環境税の創設を盛り込みました。しかし、燃料価格がかつてないほどに上昇し、消費税の増税も議論されています。来年度の税制改正での環境税導入に向けたハードルは、大変に高いと言えます。
●日本企業にとってのリスクとチャンス
環境税は経済産業省や企業の反発もあり、導入は難しいと言えますが、例えば道路特定財源制度におけるガソリン税などの暫定税率の適用取りやめに併せて導入される可能性はゼロではありません。環境省は道路特定財源を一般財源化し、一部を温暖化対策に充当するよう要望しています(編集部)

上記の記事「京都メカニズムなど気候変動政策を読み解く 今年も議論始まる環境税、排出抑制より財源に重点」は、『日経エコロジー』2006年10月号に掲載された特集です。なお、記事中に記載した内容については、『日経エコロジー』2006年10月号掲載時の内容となっております。
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