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品種改良と栽培技術の改良で減収を回避

農業への影響について報告したのは、農業環境技術研究所 大気環境研究領域 主任研究員の横沢正幸氏だ。「コメ収量変動の推計と適応」として、まず、農作物の高温被害の例を写真で紹介した。

果樹では、ぶどうの変色、みかんの日焼けや実が皮からはがれる現象が起こり、水稲では白未熟粒が増えた。白未熟粒とは、高温障害の一つで、十分に登熟(実の成熟)せず白濁したもの。稲は出穂後20日間の日平均気温が22~23℃のときに登熟が最も良好であり、26~27℃を超えると白未熟粒が増加してしまうのだ。

農業環境技術研究所 大気環境研究領域 主任研究員 横沢正幸氏

農業環境技術研究所 大気環境研究領域 主任研究員 横沢正幸氏

IPCCの第4次評価報告書では、温暖化が農業に及ぼす影響について、中緯度・高緯度地域は、熱帯などの低緯度地域に比べて比較的小さいと指摘しており、現在より2~3℃の気温上昇であれば、中高緯度地域では農業生産はむしろ向上すると予測している。

しかし、影響が及ぶ時期や地域、影響の程度については触れていないうえ、白未熟粒のような高温障害が増加し、収量が激減する可能性もある。そこで横沢氏は、日本の主食であるコメの生産を対象にして、温暖化が及ぼす影響を定量的に評価し、適応策を示した。

「平均的な気温上昇も問題ですが、突発的な変化に対して農業生産は脆弱なので、年々の変動の推計が重要になります」と横沢氏は話す。

これまでにも、通常の気象条件の変化に応じたコメ収量の年次変動や地域差を考慮した「生育・収量-環境応答モデル」はあった。これに加えて今回の研究では、温暖化による影響を推計するため、CO2濃度や高温障害過程なども考慮して設計した。

その結果、温暖化によって北海道・東北地方では増収するが、中部地方を含む西日本では減収する傾向が見られた。また、減収する場所とほぼ同じ地域を中心として、収量の変動も大きくなることが推定された。つまり、年ごとの豊作・凶作の差(年々変動)が大きくなり、生産および食料供給が不安定になることを意味する。横沢氏は、「全国平均すると、2~3℃の上昇はやや増収だが、それ以上の気温上昇になると減収に転じると推定される。これはIPCCの報告とも一致する」と話す。

県別コメ収量の変化

県別コメ収量の変化(a、b:平均収量、c、 d:20 年間の収量の変動係数)。平均収量が減る地域(a、bの青い部分)では、年ごとの収量変動も大きくなる(c、dの赤い部分)と予測される(出典:『温暖化影響総合予測プロジェクト報告書』)

温暖化に適応する方策としては、品種改良や栽培技術の改良などがある。栽培技術の改良には、田植え時期の移動、施肥管理、早期の落水などが含まれる。横沢氏は、「移植日の移動と品種改良により、減収を回避することは可能」と話す。ただし、それでも、「年々変動の問題は残る」(横沢氏)。特に、収穫までの期間が長い作物や果樹などは、気候の急激な変化への対策が難しい。

会場からは、「品種改良には遺伝子組換えが使われるのか」という質問があった。横沢氏は、「GM(遺伝子組換え)を受け入れるかという問題があるが、GMも適応策の一つと認識している」と述べた。また、「全体としては収量が増えるのだから、いいではないか」との意見に対しては、「温暖化の影響は地域ごとに異なるうえ、年々変動も大きくなるので、全体の収量が増えるといっても必ずしもプラスになるわけではない」と答えた。

最後に、今後の課題として横沢氏は、「水資源量の変化を考慮した気候変化影響の評価も行っていきたい」と語った。


(後編に続く)

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