EV普及と充電スタンドのインフラ整備の関係
最後にスピーチに立ったのは、東京電力 技術開発研究所 電動推進グループのグループマネージャーである姉川尚史氏である。「持続可能なモビリティーのためのインフラ整備」とのタイトルで、EVあるいはプラグインハイブリッド車のためのインフラについて語った。

東京電力
技術開発研究所
電動推進グループ
グループマネージャー
姉川 尚史 氏
まず姉川氏は、「CO2の排出量や燃料消費などの点で、EVが有利なのは間違いないのですが、その販売台数となると伸びていないどころか、近年は減り続けています」と、ハイブリッド車との比較ではもちろん、天然ガス車と比べての数字が伸び悩んでいる現状を紹介した。「伸びていない原因の一つは、私ども電力会社の努力不足にあります」(姉川氏)。
そうした反省も含めて、「過去になぜうまく普及しなかったか、そこから考えてみたい」として、具体的な要因をいくつかピックアップした。
一つ目は、1990年代前半までのEVは鉛電池を使用していた。このため、電池重量が重く、容量も少ないので航続距離が短く、電池の寿命も短かった。90年代後半に登場したモデルでは、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池など新型電池を搭載し、走行性能に不満はなくなったが、航続距離を伸ばそうとして電池を多く搭載したため、車両価格が高くなってしまった。
その点を踏まえ、姉川氏は性能の良いリチウムイオン電池を使いながら、搭載する電池の量を抑えるため、近距離用をターゲットにしたコミューター的な使い方が現状のEVには向くのではないかと提案する。
「当社内で使用している限り、航続距離は100kmでも特に不満はありません。業務用で使用するなら、他社でも同様なのではないでしょうか。このように用途を限定すると、『CO2低減効果はどうなんだ?』という声もあるかと思いますが、まずは(現在のEVを)ある程度の台数を売ることで、搭載する電池の価格を下げる必要があると思います」(姉川氏)。

EVの台数が増え、自動車用のリチウムイオン電池の生産数も増えれば、技術開発もさらに進み、電池の“進化”によって航続距離をさらに伸ばせるという考え方である。
リチウムイオン電池の使用と、近距離に用途を絞ることで価格を抑える。加えて充電インフラの充実が、EV普及のためには欠かせないと姉川氏はみている。
「いくら100kmの航続距離で業務用のほとんどがカバーできるといっても、やはり電池が切れるかどうかギリギリという状況は精神的に使いにくい。できれば『半分ぐらい電力を残して帰って来たい』というのが人間の心理。これは社内で実際にEVを使ってみての実感です」と姉川氏は語る。
現在、首都圏で充電スタンドが設置されているのは6カ所。これは天然ガススタンドに比べると明らかに少ない数字だ。しかも実際に調べてみると、50km走る分の充電を行うのに4時間もかかってしまったり、充電コネクターの種類が様々で使いにくかったり、充電器に鍵がかかっているなど、ユーザーにとって不便な設備がほとんどだという。
「インフラの整備が先か、メーカーが車を作るのが先かという議論がありますが、インフラが整備されていなければ、どんなにいい車が発売されてもユーザーは動かないでしょう。『土俵がないと相撲がとれない』のと同じだと考えています」(姉川氏)。
それも10分間くらいで80%程度は充電できる急速充電の設備を充実させることが不可欠とのこと。コネクターも現在主流となっているタイプに統一し、各社電池の種類によって微妙に異なる充電方法も急速充電器の側で記憶(メモリー)しておくのではなく、コネクターをつなぐと車の方から自動的に指示が急速充電器側に出るようにする必要があるという。

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