航続距離はクリアしつつあるも、コスト削減は難しい
ガソリン車に対して2倍以上のエネルギー効率を誇り、CO2排出量も半分以下、40%程度であるFCVは、こうした課題に対して有効な解決策になりうる。その普及のための上記8要件のうち、(2)以下についても「徐々にではありますが、解決してきています」(渡辺氏)。

具体的に(2)の車両搭載性については、FCVは燃料である水素を入れておく高圧容器、燃料電池、バッテリー、モーターなど複雑なシステムで成り立っており、これらの部品をいかに搭載するかが大きな課題だった。しかし、ここ数年でこれらの技術は急速な進化をしており、かつては商用バンの荷台部分を占領するほどだった大型の燃料電池システムは、現在では普通車サイズのボディでフロア下に収納可能なほどの小型化を果たしているという。しかも、燃料電池スタックの出力向上も著しく、「スタック単体であれば内燃機関を超えるほどの出力密度に到達しているほどです」と渡辺氏は語る。
燃料である水素の貯蔵技術についても、70MPa(メガパスカル)の高圧で水素を貯蔵する容器や、圧力は従来と同等の35MPaながら水素吸蔵合金を内部に使用し、従来の2倍近い容量を確保したハイブリッドタンクの開発などで、長足の進歩を遂げているとのこと。
こうしたタンクを搭載したコンセプトモデルカーとしては、今回のショーで試乗会も行われていたダイムラー・クライスラー社の「F600 HYGENIUS」で400kmの航続距離を、2008年には商用化の計画であるというホンダの「FCX」では570kmを、そしてトヨタの「FCHV-70MPa」では780kmの航続距離をカタログデータでは記録している。

トヨタの「FCHV-70MPa」については、実際に大阪-東京間をエアコンを作動させながら、水素の補充を1回も行うことなく走破しているという。「これはガソリン車と同等以上の航続距離です。現在のバッテリーEVでは実現できていません」と、渡辺氏はFCVの利点を強調した。こうしたことからも、要件の(3)で挙げられた航続距離についても、クリアしつつあるようだ。
(4)の信頼性についても、現在、バスやタクシー、宅配便車など実業務での実用試験を進めているという。さらには、FCVの欠点とされていた氷点下での始動性も確保されるなど、かなり確立されてきている様子だ。
(5)の耐久性については、ダイムラー・クライスラーでは同一車種の複数車両で384万kmという総走行距離データを既に積み上げており、実証されつつある。
水素という可燃物質を積んでいるという特性上、懸念される(6)の安全性についても、水素の漏えい実験や、実際に燃えた際の実験などを通して、通常のガソリンや天然ガスと同等程度の危険性(安全性)であることが確認されている。
そして(7)の燃料インフラについてだが、現在は首都圏に9カ所、中部圏に1カ所、関西圏に2カ所の水素ステーションを設けており、地域単位でのインフラ整備を進めていく予定としている。

ユーザーにとって気になる(8)のコストに関しては、なかなか難しいようだ。10年前に作成されたコスト低減のシナリオも、必ずしもその通りには進んでいないとのこと。「今後についても具体的な見通しがついているだけわけではありませんが、地道な努力でなんとかしていくしかないです」(渡辺氏)と述べるにとどまった。
しかし、「未来の車社会は水素の時代だ」との内容で、次代を担う子どもたちへの教育も行っている。燃料電池車がその未来を担う重要な一役であることに変わりはなさそうだ。
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