燃料電池システムや水素貯蔵技術などが大幅に進展

財団法人日本自動車研究所
FC・EVセンター長
渡辺 正五 氏
燃料電池車(FCV)の歴史と展望について講演したのは、財団法人日本自動車研究所のFC・EVセンター長である渡辺正五氏だ。
FCVの開発が本格的に始まったのは1990年代の始め。当時は米カリフォルニア州でゼロエミッション車導入規制が始まったこともあって、排出ガスゼロ車への要求が高まっており、電気自動車(EV)やFCVがそのための唯一の道として期待されていた。
しかし、EVに関しては当時のバッテリー技術ではガソリン車に匹敵する動力性能やコストを実現することは難しかった。そうした状況を受けて、FCVは1994年に発表されたダイムラー・クライスラー社の「NECAR1」を皮切りに、2000年前後まで各メーカーから多くの車種が発表される。
2002~04年にはFCVを市場化するとの発表もされたが、「リース販売という限定的な方法で市場化されてはいますが、普及には至っていません」と渡辺氏が語るように、近年ではやや勢いが衰え、2004年以降は新型車も発表されていない。
しかし、「新しいモデルは発表されていませんが、燃料電池システムや水素の貯蔵技術などについては、大幅な技術の進展が実現しています」と渡辺氏は述べる。

燃料電池が自動車の動力源となるための要件として、渡辺氏は具体的に以下の8つの項目を挙げた。
(2)車両搭載性(軽量、コンパクトさ)
(3)商品性(動力性能、航続距離)
(4)信頼性
(5)耐久性
(6)安全性
(7)燃料インフラ
(8)コスト
(1)の社会的なニーズについては、開発の始まった当初は大気環境改善のためのゼロエミッションへの要求だったが、近年では地球温暖化に対する二酸化炭素(CO2)排出低減の要求がこれに加わり、さらに石油資源枯渇やエネルギーセキュリティへの対応もニーズとして高まっていると渡辺氏は分析する。
特にCO2の排出低減に関しては「要求というよりも、実現しなければならない課題です」(渡辺氏)として、対応が急務であることを強調した。
これらのニーズにこたえるためには、「水素・燃料電池車」「クリーンディーゼル車」「バイオ燃料」「電気自動車やハイブリッド車」「IT化による渋滞解消」を5本柱として掲げ、「どれか1つの技術ですべてを達成するのは難しい。様々な技術の“ベストミックス”によって、達成の道を探っていくべきです」と渡辺氏は述べる。
2030年までに運輸部門の石油依存度を80%に低減し、エネルギー効率を30%改善。そして、2050年には世界のCO2排出量の半減が目指すべき目標であると説明した。

しかし、CO2排出量削減という目標に対して、日本の運輸部門が厳しい立場に立たされているのも事実だ。京都議定書で定められた1990年比で-6%という目標に対して、逆に+13%にもなってしまっている現実はよく知られているが、なかでも運輸部門では20%も増加してしまっているという。産業部門でのCO2排出増加がほとんどないのと対照的である。
「これは、自動車個々の燃費性能は向上しているのですが、自動車の大型化へのシフトですとか、ユーザー一人ひとりの走行距離が伸びていることなど、自動車メーカーだけではどうしようもない要素が絡んでいます。このため自動車メーカーだけでは解決できない部分でもあります」と渡辺氏は説明する。
また、世界的な原油価格の高騰は続いており、産業や発電など運輸以外の部門ではエネルギーの脱石油化を進めている現状も紹介。「自動車においても脱石油化を急がねばなりません」と述べた。
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