ビッグ3が経営危機に陥った理由
それではなぜビッグ3が最初に経営危機に陥ったのだろうか。いくつかの原因が考えられるが、まず日本や欧州のメーカーとの違いは「レガシーコスト」と呼ばれる、退職者の高額の医療給付を支払わなければならない点だ。
公的な社会保障制度がない米国では民間企業がそれをまかない、例えばGMでは1960年代以降の退職者たちの医療費などを負担している。GMのリック・ワゴナーCEO(最高経営責任者)によれば、GMのレガシーコストの負担額は新車1台当たり1000ドルに上るという。これではどんなに優れたクルマを開発しても、国際競争力を失ってしまう。
もう一つの問題は自動車の販売を金融に頼っていたことだろう。冒頭に述べたようにリーマン・ブラザーズの経営破綻後は、自動車が急に売れなくなっている。
証券会社の破綻と自動車販売がなぜ関係するのか、疑問に思うかもしれないが、最近は自動車リースが当たり前のように定着し、自動車販売を支えている。米国だけの話ではない。こうしたリースやローンは安定した金融システムがあってこそ成り立つものであり、金融の専門家の言葉を借りると、残存価格を設定したリース方式はレバレッジを利かせた販売手法である。このシステムが新興国で自動車バブルを産んだわけだが、そのシステムは実に危ういものであったのだ。
ビッグ3の問題は決して対岸の火事ではないという危機感を、日本メーカーがどこまで理解しているか定かではないが、先日、ホンダがF1から撤退するとの発表を聞き、「ホンダの危機感は鋭い」と思った。
思い返せば1970年代のオイルショックのとき、トヨタと日産はモータースポーツから撤退し、「GT-R」のようなクルマの開発は凍結されたことがあった。1990年代にもホンダはF1を自らの決断で休止したことがあった。そのときも今回と同じ経営危機を感じたのだろう。
クルマが売れないのも、クルマの販売をリースやローンに頼っていることも、米国だけの話ではない。日本も同様にリスクを抱えているのだ。ビッグ3のような危機的状態に陥らないために、自動車メーカーは何をすべきか。やはり魅力的なクルマを開発すること――これに尽きるだろう。
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