第50回 危機的状況の自動車産業、再生の条件
自動車産業を襲う未曾有の危機
リーマンショック以来、世界中でクルマが売れなくなってしまった。未曾有の自動車産業の危機。あるいは、もっと大きな経済危機が世界を襲っているのだと思う。自動車メーカーが環境問題に対応していくには膨大な開発資金が必要だが、今はそんなことを言っていられない状況に追い込まれている。
トヨタ自動車は11月6日に発表した平成21年(2009年)3月期の第2四半期決算情報で大幅な減益であることを明らかにした。同社が先行開発投資の予算を1円も削らなかったことは唯一の救いかもしれないが、景気の見通しは依然不透明だ。今以上に悪化することは避けられないかもしれないのだ。
そんな状況のなかで自動車産業はこれからどうやって立ち直るべきなのか、その将来像を考えてみることにしよう。もちろんキーワードは「エコと経済成長」である。両方とも満たせなければ、この危機は乗り越えることができないだろう。
グローバル化がもたらしたもの
1990年以降、国際社会ではグローバル化が叫ばれ、多くの自動車メーカーは世界中に自動車工場を建てることに懸命であった。為替変動のリスクヘッジと、より安い労働力を求めて、日本メーカーは東欧やアジアに進出し、海外勢ではフォルクスワーゲン(VW)がブラジルに、メルセデスやBMWは南アフリカに生産拠点を置いている。
そして、中国で作られるクルマの部品はトルコで作られているとか、ロシア(サンクトペテルブルグ)で生産されるトヨタ「カムリ」の部品はシベリア横断鉄道で日本から輸送されているとか、地球狭しとばかりに部品が世界中を駆けめぐっている。
一昔前までは人間味に溢れた職人技を連想させる「ものづくり」が称賛されたが、そんな時代は終焉し、コンピューターがクルマ作りの中心に取って代わった。各社とも開発のスピードを競い合うなかで、クルマの製造に人間はますます不要となり、いつしか人間の技から効率へと自動車産業が大きな変化を遂げていた。こうした状況のもと、新興国ではクルマのニーズが急速に高まり、一部地域では高級車が飛ぶように売れた。
「グローバル化は目的ではなく手段」という言葉を聞いたことがあるが、グローバル化の先には何があるのか。実はそのことが議論されないまま、いきなりグローバルな環境問題に突入してしまったというのが、私の正直な実感なのである。自動車の未来、モビリティ社会の将来のビジョンを示すことが、今こそ求められているのではないだろうか。
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