総合的な環境評価の重要性
最後は究極の環境対応ダンパーである「オイルフリー・ダンパー」だ。
従来のようにオイルを使わず、不活性ガスを使う。メリットは環境負荷の大幅な低減が可能であることと、オイルを使わないので引火の危険性がないこと。通常のオイルは温度上昇に伴ってダンピングが低下するが、気体ガスは温度が上がることで圧力が高まり、結果としてダンピング特性が向上するという特徴を持っている。
課題は潤滑性や耐久性である。走行性能はマイルドな乗り心地が印象的で、ロードノイズも静かなので、高級車には適したダンパーのようであった。
実際にステアリングを握ってみて、その完成度の高さに驚いたが、コストや耐久性という課題を乗り越えると、環境対応ダンパーは一気に普及するのではないだろうか。10年以内には充分に実用化が可能と期待される。

クルマ1台あたりオイルを1L以上も使用するダンパーから、環境負荷の少ないダンパーへ、KYBの取り組みは続く。
クルマの環境問題というと「燃費」にばかり注目が集まるが、製造から廃棄までを考えた、総合的な環境への取り組みも重要である。今回はLCAという製造段階における環境負荷を話題に取りあげたが、総合的な視点がとても重要なことが理解できたのではないだろうか。
例えば、プリウスは環境に優しい優等生となっているが、実は、LCA的評価では製造時に排出されるCO2はカローラよりも多い。地球資源という意味も込めると、製造時は「SOIL TO SOIL」(土から土へ)、クルマが使われている時は「WELL TO WHEEL」(井戸からタイヤまで)という、総合的な環境評価を考えることが重要なのである。
つまり、クルマが地球資源から作られ、土に返るまでの効率(土から土へ)と、燃料が地球資源から供給され、エンジンで駆動してタイヤで動くまでの総合的効率(井戸からタイヤまで)を考えるべきであろう。
ダンパーメーカーだけでなく、最近はタイヤメーカーなどでも環境への取り組みが積極化している。環境問題は局所的な視点に陥りやすいが、大きな視点で見つめることが必要なのかもしれない。
今回の試乗の模様は私が主催する動画サイトでも見ることができるので、興味のある方はアクセスしていただきたい。

総合的な視点でクルマの環境負荷を考えることが重要
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