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第7回 駆け抜ける歓び、愉しさを謳いながら進化するBMWの環境技術

2007年3月2日

モータージャーナリスト=清水 和夫 氏

ついに「140g自主規制」断念。ポスト140gは2012年の130gに決定か?

前回のコラムの最後に「次回はいよいよバイオマスや燃料電池の話題を取りあげたい。」と書いたが、読者の皆さんには申し訳ないが、いまホットな話題となっている欧州の高級車メーカーの動向をさらに探って紹介したいと思う。

欧州自動車工業会(ACEA)がEUに約束した「140g自主規制」──つまり2008年から2012年までの間に、乗用車の1km走行時の二酸化炭素排出量をメーカー平均で140g以内にするという内容の規制だが、ほとんどの自動車メーカーが達成できない状況になってきたことは前回述べたとおりだ。

こうした状況を考慮したEUは、このほど「140g自主規制」の改定案を発表した。その内容は2012年までに「130g自主規制」を法的に施行するという厳しいもの。この「130g自主規制」は、欧州の自動車メーカーのみならず、欧州で自動車を販売する日本や韓国の自動車メーカーにも重くのしかかる。

このような「待ったなし」の状況下、高級車メーカーとして知られるBMWはいかなる戦略を採っているのだろうか。

まずはBMWの「140g自主規制」における進捗率を見てみると、BMWは40%と、フォルクスワーゲン(以下、VW)の48%よりも低い。1997年のCO2排出量(1km走行時のメーカー平均値)は、VWが170gで、BMWは216gとなっている。大きなプレミアム・カーを販売するBMWにとっては、非常に高いハードルを課せられているといえる。

1997年以降は乗用車用ディーゼルエンジンが普及したことも手伝って、2005年末にはVWは159g、BMWが192gまでCO2を下げることに成功している。しかし2008年までの140gにはほど遠い。高級車を主に販売するメルセデス・ベンツやアウディもBMWと同じ状況に追い込まれており、ドイツのメーカーの進捗率は全般的に思わしくないのだ。

とあるフランスのメーカーの経営層は、ドイツの自動車メーカーの進捗状況を見て、「彼らはディーゼル乗用車を開発しても、“パワー競争”を演じている」と皮肉混じりで述べている。さらに燃費性能を向上させることが時代のニーズなのだと言わんばかりだ。

主要自動車メーカー20社の二酸化炭素排出量比較表

主要自動車メーカー20社の二酸化炭素排出量比較表

しかし、ドイツはそう単純に燃費性能だけを追い求めることができない事情がある。なぜなら、ドイツには信じられないスピードで走ることのできる「アウトバーン」が存在するからだ。

アウトバーンはご存知の通り、かのアドルフ・ヒットラーが積極的に整備を推進したドイツ全域に広がる高速道路網である。料金は無料。速度は部分的に無制限で、今でも場所によっては時速300kmを合法的に出せる。

こうした環境は、いわゆる「クルマ好き」にはうれしくて堪らないだろう。したがって、ディーゼル車でもアウトバーンを楽々と時速200kmでクルージングできなければ、ユーザーは振り向いてくれないのだ。言い換えれば、このアウトバーンがあるおかげで、ドイツの自動車メーカーは自動車技術で世界をリードできたのである。

ドイツの環境派の人達も、実は「高速モビリティ(高速移動)はドイツの大きなアドバンテージだ」と認識している。それ故に、燃費向上のためにアウトバーンでの速度を下げることは受け入れ難い。こうした自動車文化を持つドイツでは、どんなに「環境に優しく」ても、ユーザーに「我慢を強いる」技術は普及しないのである。

一方、日本のエコカーは、国家存亡の危機といわれたオイルショックの時に芽生えた「省エネ精神」がその根底にある。思い切って言い換えれば、「我慢を強いる」ことで「環境に優しく」なるという発想だ。これでは、本当に強い技術は生まれないかもしれない。米国などでは日本の環境技術が話題になるが、欧州では日本車の燃費が問題となっている。

話は脱線したが、要は、ドイツは「高速モビリティ」という文化の上に自動車社会が成り立っており、実際のユーザーにも目利きがきわめて多いのだ。さらに日本と同じく、欧州でも燃料代は高騰している。欧州ではユーロの為替も関係し、ガソリンも軽油も日本円に換算すると1リッターあたり200円もする。こうした石油の高騰が、クルマ好きの欧州人のお財布を圧迫していることは疑う余地がない。

環境問題や石油価格の高騰を背景に、ドイツのメーカーは「高速モビリティ」をどのように維持しようというのか。それでは、一連の難問に対するBMWの取り組みを見ていこう。

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