第29回 韓国の農村で受けた本場キムチの洗礼
常習性のある真っ赤な食べ物
キムチは、ただの漬け物でも食卓の添え物でもない。
それは朝鮮料理の国民的シンボルであり、
僕たちの細胞と血の一部をなし、
世界中に散らばる僕たちディアスポラの朝鮮人の
アイデンティティの拠り所なのである。
~『キムチ』 ウーク・チャング著 岩津航訳 青土社~
横浜で生まれ、ハングルを知らずにカナダで育った作家、ウーク・チャングは、その小説『キムチ』の中で、日本に滞在し、キムチを数週間、食べ控えたことで、逆に激しいいキムチ中毒に陥った話を披露しているが、キムチの真っ赤な色と風味には、確かに常習性がある。
在日でもない私でさえ、こうして韓国への旅を思い出しているだけで、涎(よだれ)が出てくるほどで、本場の味に浸りたいがためだけに足を運びたくなる。滞在中、毎日、三食欠かさずにいろいろなキムチを食べ続けたことで、体調はいっそうよくなるのだった。
首都ソウルにしか行ったことがなかった私が、初めて韓国の田舎に滞在したのは、またしても合鴨農法のカリスマ、古野隆雄夫婦といっしょの旅だった(第26回参照)。
だが、今度は、会長の鹿児島大学副学長(当時)の萬田正治さんを始め、「日本合鴨水稲会」のメンバーたち、農村社会学者や新聞記者も含めて約20人近い大所帯だ。この会では、1992年からアジア各地を旅しては現地の農民たちと交流を続け、合鴨を使った除草法による無農薬の米づくりを広めてきたのだった。
団体旅行が苦手な私が、勢いとはいえよく参加したものだとは思うが、いざ出かけてみると、これが私の偏狭なアジア観を変える旅になった。
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