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有機コーヒーを選んだワケ

一方、株式市場においてコーヒーは石油に次ぐ大きな市場で、そこでは、4つのメジャー企業が市場の4割を独占、6つの企業で約7割を独占している。そして、大手4社は、2000年、農家の苦境とは裏腹に、売上を25%伸ばしているという。

そこで、エクアドルのコーヒー組合が選んだのが、有機コーヒーだった。農薬や化学肥料を使わなければ、まずコストが削減できる。森の日陰栽培にすれば、他にもいろいろな物を栽培できる。コーヒーを直売すれば、適正な報酬を手にすることもできる。

それが、フェアトレードだった。

「そうだったのか!」と会議の席で、人知れず納得した。

このインタグの森を中心に組合の会員が、約350人。これを世界に先駆けて、そして唯一、輸入しているのは、驚くなかれ、日本人だった。

『ウインドファーム』という、北九州の小さな会社で、代表の中村隆市さんは、「ナマケモノ倶楽部」の3人目の世話人だ。

中村さんは、その昔、ブラジルで、りっぱな農場主に出会った。プランテーションだったが、そこでは農薬も使わず、年老いた労働者も手厚く保護していた。この出会いを機に彼は、コーヒーの輸入を始めた。そして、インダクのコーヒーを市場の約3倍の値で買い、売上の5%を森の再生資金に充てた。

その上、50%が前払いである。何より、毎年のように現場に出かけて、現地の人と話し合い、森を歩く。フェアトレードは、生産者に公正な価格ということ以上に、その環境を守るということが大きいのだという。

これまで意識もせずに飲んでいた1杯のコーヒーが、そういえば、地球の裏側の暮らしとつながっている。

これが、グローバル化社会の恐ろしさでもあり、面白さでもある。

ならば、せっかく一息つくコーヒーは、地球を豊かにするものであってほしい。

幸い、日本には、いろいろな動きがある。フィリピンのネグロス島の有機バナナやインドネシアのエコ・シュリンプを輸入する『オルター・トレード・ジャパン』、フェアトレードショップの草分け『ピープル・ツリー』、そして、インタグのコーヒーを飲める『カフェスロー』、サリナスのチョコレートなどを輸入する『スローウォーターカフェ』

さて、この旅の後、私も、普段のコーヒーの大半を『ウインドファーム』から買うようになった。これも何かの縁である。

小さな1杯だが、毎日、続ける1杯は大きい。

たかがコーヒー、されどコーヒーである。

福岡県水巻町にある『ウインドファーム』の焙煎所の前に立つ中村隆市さん。

福岡県水巻町にある『ウインドファーム』の焙煎所の前に立つ中村隆市さん。

サリナスの有機チョコレート。私たちが普段口にしているものとはひと味も、ふた味も違う。

サリナスの有機チョコレート。私たちが普段口にしているものとはひと味も、ふた味も違う。


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島村 菜津(しまむら・なつ)

ノンフィクション作家。

1963年福岡生まれ。東京芸術大学美術学部卒業。著作に『フィレンツェ連続殺人』(新潮社)、『エクソシストと対話』(小学館・21世紀小学館ノンフィクション大賞優秀賞)。『イタリアの魔力』(角川書店)、『スローフードな人生』(新潮社)、『スローフードな日本』(新潮社)などがある。最新刊『バール、コーヒー、イタリア人~グローバル化もなんのその~』(光文社)が好評。

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