このページの本文へ
ここから本文です

第8回 1杯のコーヒーからできること

2007年12月18日

ノンフィクション作家=島村 菜津氏

コーヒーの木は本来日陰を好む植物

私は、原稿を書きながら、よほど胃が弱っていない限り、毎日のようにコーヒーで一休みする。たかがコーヒー、されどコーヒー。

エメラルド・フォレスト『ラ・フロリダ』の持ち主カルロス・ソリージャが、泊まったほったて小屋、もとい、“エコホテル”の裏に生えているコーヒーの実を見せてくれた。

コーヒーは、大木の陰に遠慮がちに生えていた。だが、えらく暗い。これじゃ、お日さまが当たらないじゃないか、と素人は心配した。だって、日本で見慣れているコーヒー畑の写真は、お日さまがさんさんと注ぐ、見渡す限り平らなコーヒー畑だった。

しかし、それはカルロスによれば、植民地時代に生まれた巨大なプランテーションだと言う。本来、コーヒーの木は、森の日陰に自生している。むしろ日陰を好む植物なのだ。

「伝統的な日陰栽培をすれば、こうして鳥もやってくる。20年の歴史が実証してくれたが、害虫がこないし、土壌の湿度も安定している。虫や鳥といった生物の多様性も守られるんだ。実のつけ方は、コーヒーしか植わっていないプランテーションに比べると、3割ほどだが、その代わり木は40年でも生きる」

カルロスは続けた。

「コーヒーはチッソを固定する。だから、普通のプランテーションでは、15年もすれば、土がすっかりダメになる。農薬や化学肥料の負担もあるからね。だが、ここの土は、確実に年々、よくなってきている。実も5回くらいにわけて、赤くなったものだけを手で摘むんだ」

実が熟すのも、収穫も、スローだった。

そもそも銅山開発の代わりに選んだ森のコーヒーの栽培だった。それをもっと盛り立てようと「ナマケモノ倶楽部」の辻信一さんたちが企画していたのが、「持続可能なコーヒー国際会議」だった。

成り行きで、その準備会議に私まで顔を出すことになった。アンニャ・ライト、コタカチのアウキ・ティトゥアニャ郡知事の奥さん、イタリア人のNGO代表、それに流暢な英語とスペイン語でがんがん議論する辻さん、その教え子で、こちらに住み着いた和田彩子さん、とこれまた多様な顔ぶれだった。

その席で、私はまた生まれて初めてフェアトレードという言葉にピンときた。

自分の森で、まだ青いコーヒーの実を教えてくれたカルロス。

自分の森で、まだ青いコーヒーの実を教えてくれたカルロス。


バックナンバー
ここから下は、過去記事一覧などです。画面先頭に戻る バックナンバー一覧へ戻る ホームページへ戻る

記事検索 オプション

SPECIAL

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。

ご案内 nikkei BPnetでは、Internet Explorer 6以降、 Safari 2以降、Opera 8以降、Netscape 8.1以降またはHTML 4.01/CSS level 1, 2をサポートしたWebブラウザでの閲覧をお勧めしております。このメッセージが表示されているサポート外のブラウザをご利用の方も、できる限り本文を読めるように配慮していますが、表示される画面デザインや動作が異なったり、画面が乱れたりする場合があります。あらかじめご了承ください。

本文へ戻る