第8回 1杯のコーヒーからできること
コーヒーの木は本来日陰を好む植物
私は、原稿を書きながら、よほど胃が弱っていない限り、毎日のようにコーヒーで一休みする。たかがコーヒー、されどコーヒー。
エメラルド・フォレスト『ラ・フロリダ』の持ち主カルロス・ソリージャが、泊まったほったて小屋、もとい、“エコホテル”の裏に生えているコーヒーの実を見せてくれた。
コーヒーは、大木の陰に遠慮がちに生えていた。だが、えらく暗い。これじゃ、お日さまが当たらないじゃないか、と素人は心配した。だって、日本で見慣れているコーヒー畑の写真は、お日さまがさんさんと注ぐ、見渡す限り平らなコーヒー畑だった。
しかし、それはカルロスによれば、植民地時代に生まれた巨大なプランテーションだと言う。本来、コーヒーの木は、森の日陰に自生している。むしろ日陰を好む植物なのだ。
「伝統的な日陰栽培をすれば、こうして鳥もやってくる。20年の歴史が実証してくれたが、害虫がこないし、土壌の湿度も安定している。虫や鳥といった生物の多様性も守られるんだ。実のつけ方は、コーヒーしか植わっていないプランテーションに比べると、3割ほどだが、その代わり木は40年でも生きる」
カルロスは続けた。
「コーヒーはチッソを固定する。だから、普通のプランテーションでは、15年もすれば、土がすっかりダメになる。農薬や化学肥料の負担もあるからね。だが、ここの土は、確実に年々、よくなってきている。実も5回くらいにわけて、赤くなったものだけを手で摘むんだ」
実が熟すのも、収穫も、スローだった。
そもそも銅山開発の代わりに選んだ森のコーヒーの栽培だった。それをもっと盛り立てようと「ナマケモノ倶楽部」の辻信一さんたちが企画していたのが、「持続可能なコーヒー国際会議」だった。
成り行きで、その準備会議に私まで顔を出すことになった。アンニャ・ライト、コタカチのアウキ・ティトゥアニャ郡知事の奥さん、イタリア人のNGO代表、それに流暢な英語とスペイン語でがんがん議論する辻さん、その教え子で、こちらに住み着いた和田彩子さん、とこれまた多様な顔ぶれだった。
その席で、私はまた生まれて初めてフェアトレードという言葉にピンときた。

自分の森で、まだ青いコーヒーの実を教えてくれたカルロス。
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