第29回 世界遺産・石見銀山の町並み
静謐な山陰地方に佇む
世界遺産・石見銀山
山陰はいつも静かだ。
とりわけ島根県の松江から浜田へ、そして益田へと日本海沿いに西へ下ってゆくとき、まるで時代をさかのぼってゆくような錯覚に陥ることがある。
この石見(いわみ)地方には一種、独特の静謐さが満ちているのだ。同じ日本海側でも北陸にはない明るい陽光の中、海はあくまでも青く、山の緑はどこまでも濃く、そうして町や村は自然に囲まれてひっそりと佇んでいる。
その中にあって、うっそうとした樹木に囲まれた世界遺産・石見銀山の遺構は、かつて深い竹やぶに覆われて、訪れる者を阻むかのようであったという。
石見銀山は一度、世界遺産登録を逃しかけた経緯があるが、そのように一見、長い年月にわたって放置されたまま荒れ果てたように見える自然環境こそ、実はこの遺跡の特長だということが再評価されて、登録に至ったのである。
それから1年、銀山へのアプローチに沿って残っていた古い町並みの変わりようが気掛かりで、様子を見に行くことにした。
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