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第25回 “錆び”という時間を味わうグラス

2008年7月18日

デザイナー=益田 文和氏


雑貨屋で見付けた“不良品”のグラス

もう何年も前のことだが、東京のある輸入雑貨店で面白いグラスを見付けた。小さなグラスの下半分に膨れたような盛り上がりがいくつかあって、その間のへこんだ部分を針金で縛ってある。

実際には、先に針金で形を作っておいて、その中にガラスを吹き込んだものだろう。針金の間からあふれるように膨らんだ形が何とも愉快で1つ買うことにした。

確かスペインかどこかの作家のものだという説明が付いていたと思う。それにしては針金の巻き方といい、泡だらけのガラスといい、つくりはどちらかというと雑な印象で、価格もごく安いものであった。

ディスプレイされた木箱の中に、いくつも無造作に入れられていた中から形が気に入ったものを1つ選んで持ち帰り、ウイスキーを注いでは楽しんでいた。

どのくらい経ったころだったか(おそらく1カ月か2カ月ほどだろう)、使ううちに針金が錆びてきたのに気が付いた。「これは」と思うところがあって、いくつか買い足そうと同じ店に行ってみると、見当たらない。

売り切れたのかと思って店の人に聞くと、錆びるといって返品する客が多く、不良品として販売を中止したという。もう輸入する予定もないらしい。

しまった、気付くのが少し遅かったようだ。

針金がだいぶ錆びてきたころには、もうすっかり手放せない愛用のグラスになってしまっていた

針金がだいぶ錆びてきたころには、もうすっかり手放せない愛用のグラスになってしまっていた
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