第19回 裏返されたぬいぐるみの記憶
オランダ人らしい“ユーモア”?
24時間休みなしのワークショップ
デザインの中にどのような形で時間の要素を入れるか――2003年10月、オランダで行われたエコデザインの国際会議「Time in Design」は、一風変わったワークショップであった。
とても興味深いテーマだと思いレクチャーを引き受けたが、送られてきたプログラムによれば24時間のワークショップだという。
「時間」をテーマにした会議だけに、皆でどこかのリゾートホテルにでも泊まり込んで、時間を忘れて話をしようというようなことだろう。独特のユーモアセンスを持つオランダ人らしい発想である。参加の意思を伝えるメールで、どこに何泊するのか問い合わせてみた。
ところが返ってきた答えは、定刻までにアイントホーフェン市の会場に来てくれれば、24時間後にワークショップは終了するのでホテルを予約する必要はないというもの。どうやら主催者は本気なのである。
会場となったのは、今や世界有数のエレクトロニクスメーカーとなったフィリップス社の旧工場。1891年に創業した当時の、歴史的にも貴重なその工場で、ワークショップは24時間ひと時の休みもなく続けられたのである。
だからといって、彼らは決して生真面目なのではない。むしろその苛酷な状況を楽しんでいるのである。その証拠に、会議と並行して様々な風変りで楽しい展示や、エンターテインメントが開催されているし、夜は寝させてくれない代わりにいくつもの休憩室が用意されていている。
ある部屋では専門家によるエクササイズ、隣の部屋ではカイロプラクティクス、別の部屋には日本のカプセルホテルを模した箱が積み上げられ、その向かいの部屋には病院のベッドと本物のナースが血圧計を持って待機している……といった具合だ。もちろん、アルコールは常時提供されている。かつて世界の7つの海を席巻したオランダ人の冒険心は、こんな形で今も健在なのである。
いくつもの小部屋が並ぶワークショップ会場。照明がより不思議な世界を演出しているようだ(出典: "Eternally Yours. Time in Design", Ed van Hinte, Thonik, and 010 Publishers, Rotterdam, 2004)
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