第16回 コカ・コーラの顔を持つスイス時計
クシャクシャにつぶされた
アルミ缶の腕時計
デザインという仕事をしていると、ごくたまにではあるが、よく考えられたデザインに出合って、「ああ、やられたなぁ」と思うことがある。そんなときは正直、少し悔しいような気持ちもしないではないが、それ以上に、「なるほど、まだまだやりようがあるもんだなぁ」とうれしくなるものだ。
しかし、10年以上前になると思うが、この「ReWATCH(リウォッチ)」を初めて見たときのような衝撃は、めったに経験できるものではない。「えっ」と絶句したまま、しばらくただ見つめていた。「我が目を疑う」とはこのことだ。

これが「ReWATCH」。近付いてよく見ると、コカ・コーラのアルミ缶がクシャクシャにつぶれているのが分かる
腕時計のベゼル(文字盤のガラスがはまった縁の部分)がコカ・コーラの缶で出来ているように見えたのだが、それ自体はさして珍しいことではない。空き缶を使って色々なものを作ることは、昔から行われてきた。
戦後間もない日本では、輸出品の主役はおもちゃだったが、材料がないので米軍キャンプから出る缶詰の空き缶などを使う。スープ缶を加工して作った自動車などが米国で人気だった。
同じようなものは今でもベトナムなどの東南アジアでは土産物として定番だし、ブラジルのサンパウロの路上では、アルミ缶を器用に細工したミニチュアのポットやカップなどを作って売っている。だから、アルミの空き缶で作ったおもちゃの腕時計があっても特に珍しくもない。
ところが、今、目の前にある腕時計は、おもちゃどころかずいぶん品質の良い時計のように見える。値段も決して安くない。それにもかかわらず、ベゼルはコカ・コーラのアルミ缶をつぶして成型したらしく、皺だらけなのだ。

サンパウロ(ブラジル)の道端で売っていたおもちゃのキッチンツールセット。ダイエット・コーラの缶で作られていている。ディテールまで気を使った器用な細工が印象的

ストックホルム(スウェーデン)の街角で買ったもの。置いてあるいくつもの空き缶の中から好きなのを選ぶと、その場でたちまち作ってくれる。灰皿にも小物入れにも使えそうだ
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