第10回 自転車の部品に込められた懐かしい思い出
少年時代の思い出がよみがえる
自転車パーツを使ったフォトフレーム
自転車のギアと思われる部品に、モノクロの子供の写真がはめ込まれている。
この写真立てを初めて見た時の、不思議な感覚は忘れられない。「記憶」という言葉が、1つの形を持っている――そんな感じだ。
自転車というものに、多くの人々は様々な思いを抱くものだ。よほどひどいケガや事故を経験していない限り、それは良い思い出だろう。
特に、かつて男の子だった人にとっては、初めて経験するスピード、初めて手に入れた自由、自分の手で機械を操る誇りと喜びを与えてくれたのが自転車であり、女の子を寄せ付けない“秘密結社”の証だったはずだ。
自分が幼かった頃の写真、自分の子供の写真を飾るのに、これ以上のフレームは考えられないだろう。
さらに、自転車のチェーンを巻いて枠にしたフォトフレームまである。グリースはきれいに洗い落とされているものの、擦れた痕は“使われた”チェーンであることを物語っている。このフレームは、廃棄自転車の部品で作られているのだ。よく見ると、巻き付けたチェーンのほんの数カ所を溶接して留めただけの、簡単な作りであることが分かる。
こんなことができるのは自転車のパーツを知り尽くしたうえで、作りたいものを考え出す構想力と観察眼を持ち、最小の加工で最大のパフォーマンスを得る、熟達した技の持ち主に違いない。
自転車の部品をはじめ様々な廃材で素晴らしくユニークでユーモラスな製品を作り出すリソースリバイバルという会社は、グレアム・バーグ、ジム・ハッサート、アンディ・シュベルト、キフ・シェウアー、ベン・ヤングといった数人の若者によって運営されている。
設立は1994年、米国のオレゴン州ポートランド市であった。今は、オレゴンの大自然の中を滔々(とうとう)と流れる大河・コロンビア川流域から美しい火山マウントフッドを臨むロケーションに工房を構えている。

コグ(歯車)のフォトフレーム。自転車にまつわる懐かしい記憶が、写真の思い出を美しく縁取る

自転車のチェーンのフォトフレーム。工業製品、それも長年使われてきたメカ部品の力強さ、造形としての完成度の高さは、それを意図していないだけに思いがけず美しい
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