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第9回 箱根の伝統を引き継ぐ「寄木細工」のブラインド

2007年11月27日

デザイナー=益田 文和氏


箱根の“温泉土産”
寄木細工が秘めるもの

2006年度に神奈川県と東京造形大学大学院が行った「地域環境資源の活用」プロジェクトの中で、繊維のリサイクルや再生ガラス工芸とともに、箱根寄木細工を応用したデザインをテーマに掲げた。

寄木細工が生まれ育った箱根・小田原地区は神奈川県下であるから地域資源であることは分かるとして、どういうわけでそれが“環境資源”になるのか?

理由は、その作り方にある。

そのことについては後で詳しく説明するとして、まず、「箱根の寄木細工」と聞いてどれほどの人が理解できるだろうか。

関東でも東京、神奈川の出身者であれば、伊豆・箱根は海と山がワンセットの近場の行楽地だ。小中学校の遠足や家族旅行、湯の旅と、何度か足を運んでいるのではないだろうか。すると小田原駅前の土産物屋や旅館の部屋で必ず目にするのが、寄木細工の“秘密箱”である。

寄木細工の秘密箱

寄木細工の秘密箱

それは大小様々あるが、一見するとごく普通の木製の箱だ。だが、巧妙に仕込まれた隠しかんぬきを見付け出し、秘密の手順通りに押したり引いたり、上げたり下げたり操作してゆくと、やがてふたが開く。

数回の操作で開くものから、数十回、数百回とからくりをあばいてゆかないと開かないものまで、難易度の異なるものがそろっている。目と勘と記憶力に加え、指先の感触でパズルを解いてゆく感じが独特で、一度始めるとなかなかやめられない。雨に降られた温泉宿での暇つぶしにはもってこいの、ちょっと風流な遊び道具なのである。

この秘密箱は、細かい木片を寄せて作った寄木特有の複雑な模様を生かして、からくりの継ぎ目が分かりにくくしてある。温泉街と秘密箱――寄木のパターンには、どこかしら秘密めいた艶っぽいイメージが付きまとう。

これは土産物としては得がたい特長なのだが、同時に、そこにとどめておくのはもったいない。経済産業大臣指定のれっきとした伝統的工芸品である箱根寄木細工から“温泉土産”というイメージを払拭(ふっしょく)し、もっと生活の中に生かすことはできないだろうか――そんな、産地にしてみれば余計なお節介に違いない動機から、大学院生たちはアイデア開発を始めた。

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