第7回 風土の記憶を漉く、立体抄造の和紙
土佐和紙の産地で生まれた立体和紙
仁淀川といえば、四万十川と並ぶ高知県きっての大河であるが、その蕩々(とうとう)たる流れを間近に臨む伊野町は、古くから土佐和紙の産地として知られている。
立体抄造和紙「CARTA(カルタ)」を生み出した加藤俊男氏が、ここにイメージラボテクストという開発研究所兼製作所を設置したのは1982年。その2年前に着手した“型を用いて和紙を立体的に漉き上げる”という前代未聞のプロジェクトは、以来ここを拠点に進められ、その挑戦は今日まで続いている。
素材は昔ながらの楮(こうぞ)である。日本中に自生する雑木の樹皮から得られるこの繊維は、長く、強く、しなやかで手漉き和紙原料の代表格である。いうまでもなく楮、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)などから作られる和紙は典型的な“非木材紙”である。
日本は江戸のころから世界有数の紙の生産、消費国であったにもかかわらず、西洋から木材パルプ紙が入ってくるまで森の木を切って紙にすることはなかった。
サステナブルな紙の文化が根付いていたのである。土佐和紙は、その伝統を今に受け継いでいる。
この素晴らしい素材と技術を応用して、和紙製品の可能性を広げるために、あえて立体抄造(紙を漉いて作ること)に挑んだ加藤俊男氏の10年におよぶ苦闘の成果は、まるで月面の一部を切りとったような丸い照明器具「CARTA」として結実する。

まるで月面の一部を切り取ったような「CARTA」
この連載のバックナンバー バックナンバー一覧へ 画面先頭に戻る
- 第34回 人類は食物連鎖の“やらずぶったくり” (2008/11/21)
- 第33回 デジカメが記憶にもたらす変容 (2008/11/07)
- 第32回 “暗いコンビニ”の記憶 (2008/10/24)
- 第31回 引っ越しで捨てられた家具の使い道 (2008/10/10)
- 第30回 電子メディアをアナログに使う (2008/09/26)

