第6回 文化の記憶を織り上げる「裂織」
貴重な木綿を大切にする
庶民の知恵が生んだ「裂織」
「裂織(さきおり)」という言葉をご存じだろうか。それは文字通り“布を裂いて、織る”こと。かつて木綿の布地が貴重品であったころ、着物をほどいては洗い、洗っては仕立て直すことを繰り返し、丁寧に繕いながら長いこと着続けた。やがて、いよいよ着られないほど傷んでしまうと、細く裂いてひも状にする。それを緯糸(ぬきいと・よこいと)として、木綿や麻を経糸(たていと)として織り直し、再び布として使った。
こうして手間を掛ければ、ざっくりとした独特の質感を持った丈夫な布ができる。裂織が盛んに作られるようになったのは江戸時代の中期以降だという。江戸時代の初期に日本に入ってきた綿花の栽培が定着して、それまでの麻やカラムシなどに代わって、着心地が良く保温性のある綿織物が普及したのもこのころだ。
木綿は綿花の栽培に適さない北国では特に貴重品であったことから、裂織も北国の庶民にとって欠くべからざる必需品だったのだろう。リサイクルの原型のような裂織の“心”と技術は当時から現代まで受け継がれ、最近ではその工芸的価値と共に資源を大切に使う考え方が改めて見直されている。
裂織の特徴の1つはオリジナルの布地の色や柄、テクスチャーが残るということ。同じ古着のリサイクルでも、ウールなどで行われる反毛(はんもう)は、いったん繊維までほぐして糸から作り直すので、出来上がった再生布は新品と見分けがつかないが、裂織の場合は裂かれた“布の記憶”の断片がちりばめられて残っている。布の中に別の布がそのまま織り込まれた特異な組織なのである。その特徴をうまく生かすことで裂織特有の風合いが生まれ、その魅力が人々を引き付ける。

ざっくりとした質感と、オリジナルの布の柄を生かした風合いが魅力の裂織(中西悦子・作)

色々な着物の糸のディテール
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