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第4回 色の記憶をとどめるステンレス

2007年9月14日

デザイナー=益田 文和氏


空や海が青く見える不思議
同じイリュージョンを金属にも

“色”というのは、実に不思議なものだと思う。空の青さも、海の青さも、光の仕業で我々の眼に青く映るばかりで、大気や海水のどこを探しても青い色の粒があるわけではない。それは、言ってみれば虚空に“青”という幻影を見ているようなものだ。

これと同じ仕組みを使って、金属の表面に色を発現させることができる。それは、一滴の染料も、一粒の顔料も使わず、いわば“イリュージョン”として、色彩を見せる技術だ。

新潟県燕市は、ステンレス加工製品の町である。だから、地場産品の物産展示場に行っても、スプーンやフォーク、包丁をはじめステンレス製の鍋釜その他の調理器具や雑貨類でいっぱいなのだが、店中がステンレスの色、いわゆる銀色一色でピカピカしている。

それはそれできれいなのだが、色を着けられればもっときれいなはずだし、今までできなかった製品ができるのではないか――私が「中野化学」(その後、社名を変えて現在は「中野科学」)というステンレスの表面加工会社の中野社長から、そんな相談を受けたのはもう10年以上前になる。

開発当時の試作品の1つ、カクテルシェーカーとケトルの部品を利用した卓上ランプ

開発当時の試作品の1つ、カクテルシェーカーとケトルの部品を利用した卓上ランプ

ステンレス製品の加工は、スプーン1本でも地金を切断し、プレス機で打ち抜き、絞り加工で形を作り、バリ(小さな突起やギザギザなどの余計な部分)を取って形を整え、磨いて仕上げるまでに、何十という工程を必要とする。

燕市には、そのすべての工程のそれぞれの専門工場があって、町中で分業体制をとっている。ほかの地域のメーカーが、すべての工程を自社の工場でまかなわなければならないのに比べて、この町を挙げての分業体制は、短納期で大量の仕事を請けることができる日本一のステンレス加工産地を作ってきた。

中野科学は、その長い加工工程の最後の仕上げを受け持つ、表面加工の専門メーカーである。

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