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第3回 時を味方にするアルミ合金製の工具

2007年8月31日

デザイナー=益田 文和氏


「超超ジュラルミン」で作る
軽量の作業工具シリーズ

ペンチやニッパー、レンチやドライバーなど、手に持って使う工具を作業工具という。作業工具はたいてい鉄で出来ているから、重い。素人がたまに短時間使うなら構わないが、毎日、1日中、工具を使い続けるプロにとっては、少しでも軽いことは大きなメリットとなる。

特に、腰にいくつもの工具を吊り下げて、足場の悪い高所で作業する建設業や電気工事の現場では、重さは時に事故につながりかねない。

こうしたプロを中心に、従来から軽量工具に対するニーズはあって、作業工具メーカーにとって製品の軽量化は普遍的な課題の1つである。

大阪府堺市・東大阪市と並ぶ日本の作業工具の3大産地の1つ、新潟県三条市で「アルミ合金で軽量工具を作る」というプロジェクトが立ち上がったのは、1993年のことだ。作業工具メーカーから成る新潟県作業工具組合では、1年がかりで使い手の作業状況や意識、流通の課題、価格設定の可能性などについてマーケットリサーチを行い、同時に素材の性能に関する調査を行った。

そもそも工具の軽量化を阻む最大の原因は、「鉄」という素材にある。比重の軽い非鉄金属はいろいろあっても、そのいずれもが強度不足かコスト高で工具には向いていない。そのことは、すでに組合員の企業で、ほとんどの素材を試してきたので実証済みだ。

今回は比較的、価格が安くて扱いやすいが、軟らかくてもろいので工具にはならないと思われているアルミ合金に改めてチャレンジしてみようということで、私はそのデザインの相談を受けたのである。

素材に関してはすでに専門の研究機関での検討を経て、「A‐7004」というアルミ合金が選ばれていた。A‐7000番台は「超超ジュラルミン」とも呼ばれ、航空機の構造用部材のために開発されたものだ。太平洋戦争当時、海軍航空隊のゼロ戦でも使われた実績を持っている。

通常、ペンチなどの作業工具は鍛造(たんぞう)で作られる。熱した鉄の塊を金型に挟み、何十tという圧力でプレスして成型するのだが、たくさんの種類があるアルミ合金の中でも、工具としての使用に耐えられる十分な強度を持ち、なおかつ鍛造に向いている性質のものとして選ばれたのが、このジュラルミンだった。

さて、デザインをするにあたっての課題はいくつかあったのだが、まず、開発対象が単独の製品ではなく、10数アイテムから成る一連の作業工具シリーズであった、ということが挙げられる。

ペンチ、ラジオペンチ、ニッパー、モンキーレンチ、レチェットレンチ、メガネレンチ、コンビネーションレンチ、両口スパナ、シャコ万力、ウォータポンププライヤー、それにドライバーの11アイテム。ドライバーのプラス、マイナスにレンチやスパナ類のサイズバリエーションを含めると、15種類になる。

完成したアルミ合金製軽量工具「ALUTOOL」シリーズ。

完成したアルミ合金製軽量工具「ALUTOOL」シリーズ。上列左から、シャコ万力、モンキーレンチ、ラチェットレンチ、ウォータポンププライヤー、コンビネーションレンチ、メガネレンチ、両口スパナ。下列左から、マイナスドライバー、プラスドライバー、ニッパー、ペンチ、ラジオペンチ

これら機能の異なる製品群を1つのシリーズとして、一貫性のあるデザインテーマでまとめなければならない。一方で、その各々が、作業工具組合員である企業の中から募ったすべて異なるメーカーで開発されるというのだ。

私は、いわば一度に11社のクライアントの仕事を抱えたようなもので、しかもその11社がそれぞれの製品分野ではよく知られたトップブランド企業ぞろいだから、一筋縄ではいかない。

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