インドネシアは1万7千もの島からなり、日本の5倍余りの広さの国土を覆う熱帯雨林はブラジルに次ぐ規模であるが、過去50年間でそのほぼ40%を失ってしまったという。首都ジャカルタのあるジャワ島は、観光地として有名なバリ島の東に隣接する細長い島だが、ここでも近年大規模な不法伐採によって、かつての豊かな熱帯雨林は急速にその面積を失いつつある。
シンギーが住むセントラル・ジャワ州でも自然環境破壊は深刻で、貴重な森の木が事もなげに切り倒されてはベニヤ合板などに加工され、輸出されてゆく。その最終的な輸入国は日本をはじめとする工業先進国と、最近、急激に木材輸入量が増えている中国だ。
インドネシアでは、マホガニーやチークの成木1本でも、大切に使って様々な家具や工芸品を作れば、木工職人1人がその家族とともに丸一年食べてゆけるという。
森が滅んでしまう前に、残された木を使って色々な物を作ろうと、彼はこの10年間、自分で工房を作り、村の若者に木工を教え、次々と製品を開発してきた。
素材である“木”そのものの良さを大切に、極力シンプルで、使いやすく作りやすいデザイン。そして、長い間使ってもらえるような魅力を持ったデザインを心掛けた。そうして生まれた「Magno」シリーズは、開発途上国の木工製品にありがちな手作りの民芸品臭さがなく、素朴というよりはむしろ洗練された北欧の木工製品のデザインに通じるモダンなセンスを感じさせる。それでいて、温かなアジアらしさも失っていないところに独特の魅力がある。
個々の製品はパンヤの木箱に丁寧に納められ、その1つ1つにシンギーのメッセージが添えられて使い手のもとに届けられる。
「自然の木を使うのは工業製品に生きている体を与える儀式のようなものです。……この小さい木の製品は、素材を節約し、貧しい地域の人々に働く機会を与えています」
ステーショナリーがセットになった「デスクトップセット」。パッケージデザインも人気の秘密だ。左奥から、テープディスペンサー、ホチキス、ペンと名刺立て、ペンと名刺と封筒立て、ペーパーナイフ、カッター、パッケージ
(画像をクリックすると拡大)
この連載のバックナンバー バックナンバー一覧へ 画面先頭に戻る
- 第34回 人類は食物連鎖の“やらずぶったくり” (2008/11/21)
- 第33回 デジカメが記憶にもたらす変容 (2008/11/07)
- 第32回 “暗いコンビニ”の記憶 (2008/10/24)
- 第31回 引っ越しで捨てられた家具の使い道 (2008/10/10)
- 第30回 電子メディアをアナログに使う (2008/09/26)



