第12回 角地のドラッグストアから継承したものは
コミュニケーションの記憶
イタリアンバーの出現で
大きく変化した職場環境
東京・日本橋にある僕の事務所「Open A」の1階には、「bigote(ビゴーテ)」という名のイタリアンバーがある。
今までの事務所が手狭になっていたところに、ちょうど隣の倉庫が空いたので、勢いで借りてしまった。ただその倉庫は3階建てで、事務所だけで一棟借りるには持て余す。そこで「東京R不動産」の若いスタッフに「飯と酒がうまくて、居心地のいいカフェ、連れてきてよ」と、適当なオーダーを出していたら、ある日「bigote」が本当にやってきた。
薄焼きのナポリピザがうまい。しかもそれが500円。ビールもワインもワンコイン。そんな金額設定で店が成り立っているのが不思議で仕方がないが、この店のおかげで僕らの生活は一変することになった。仕事の合間にちょっとバーに立ち寄れる。コーヒーやビザはケータリングで上の事務所まで運んでくれる。ミーティングにも人を呼びやすくなった。行き詰まったら気分を変えて、バーで話すこともしばしば。
さらに、そこには地域の仲間たちや、時には遠くからも友人がフラリとやって来る。別に僕がいなくてもいい。「いたら、ついでに少し話そうか」くらいの軽いモードでやって来る。いつの間にか、ここは地域の重要なコミュニケーション拠点になっている。僕らにとってかけがえのない場所だ。
以前より「街の環境を決定的に変えるのはおいしい飲食店だ」というのが持論だった。
「bigote」を見ていると、4年前に取材旅行で行った、NY、ブロンクスのある店のことを思い出す。それは、小さな1件のレストランの出現が、その周辺の様子をがらりと変えてしまう物語だ。


イタリアンバー「bigote」。狭い店内だが、そこで大勢が立ったり座ったりして飲んでいる。前の道は車通りも少なくて、夜ともなればどこまでが店で、どこまでが道路なのか曖昧。路地文化は現代でも生きている?
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