かつては第1の予算だけでなんとか賄ってきたわけだが、ここにきて、社会の抱える問題は多様化し、しかも官の力だけでは解決が難しくなってきた。もっとありていに言えば、社会のどこにどういう問題があるのか、その発掘を政府も地方自治体もできなくなってしまったのだ。その結果、税金で集めたお金を一体どこに流せばいいのかもわからなくなってきた。これが実態ではなかろうか。
とすれば、誰が官の弱さを補完していくのか。それは市民の立場で身近に問題を見ているNGOではないのか。今や、社会の中で社会のどこにお金が必要なのかがわかっているのはNGOやNPOなのである。そんな現象が世界のあちこちで見られるのである。まさに、第2の予算ルートが必要となるゆえんである。
政府に代わってお金の必要なところを探し出してくる。そこへお金を流し、社会の問題解決に取り組む。そんなNGOやNPOが増えれば増えるほど、社会は良くなるのである。高い志と高い能力を持つNGOをつくり、それらをうまく育てていけば、複雑で多様な問題を抱える社会に効率的にお金を回すことが可能になる。そのためにも、まずは社会として、国として、NGOの存在意義を認め、NGOを育てる意識を持つことが必要なのである。
うれしいことに日本でもNGOを巡る新しい動きが見られる。ある大手メーカーはNGOで活躍した女性を採用し、CSR室長に抜てきした。ある損保会社は女性社員を1人、NGOに派遣している。こうした例が今後も広がることを期待する。
日本ではNGOというと、「自己顕示欲が強い人の集まり」など、良くないイメージを持つ人も少なくない。だがNGOは、我々市民の声を代弁する重要な存在なのだ。NGOがなかったら、誰が市民や消費者の声を代弁するのか。我々は改めてNGOの存在や役割を考え直すべきだと思う。
科学が最も発達し、その歴史で最も大きなパワーを手に入れた人類が、実は歴史のなかで最も難しい問題を引き起こし、解決策も見いだし得ぬまま抱え込んでいる。にもかかわらず、何とかこの地球社会が回っているのは、献身的に働いているNGOやNPOがあるからだ。NGOは世界の良心なのである。
末吉 竹二郎(すえよし たけじろう)
国連環境計画・金融イニシアティブ 特別顧問
1945年生まれ。鹿児島県出身。1967年、東京大学経済学部卒業後、三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。94年にニューヨーク支店長、取締役。96年に東京三菱銀行信託会社(NY)頭取。98年に日興アセットマネジメント副社長に就任。2002年に退任後、2003年に国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)特別顧問に就任。 2003年10月UNEP FI東京会議を招致、「東京宣言」の発表に尽力。 福田、麻生内閣「地球温暖化問題に関する懇談会」のメンバー。東京大学大学院非常勤講師。現在、テレビ番組のレギュラーコメンテーターとして活躍するとともに、環境問題やサステナビリティ・CSR分野において、講演や執筆活動を精力的に行っている。著書に「ビジネスに役立つ!末吉竹二郎の地球温暖化講義」(2009年、東洋経済新聞社)など。